肝臓がん
こちらのサイトを訪れてくださった皆様は、健康診断などで「肝機能低下」を指摘された経験はありますか? そういった経験がある方の多くは、『特に症状はないのに』『元気だけどなぜ?』と不思議に思ったのではないでしょうか。
当院でも、自覚症状が全くないという方を採血検査してみると、肝機能を表す検査項目が異常値を示すことが多くあります。こういったことが、肝臓が「沈黙の臓器」と言われる所以です。これは、肝臓がんの場合でも同様です。肝臓がんという重篤な疾患にもかかわらず自覚症状が乏しく、早期に発見するのは非常に難しいと言われます。この記事では、肝臓がんについて詳しく解説しますので参考にしていただけると幸いです。
♦︎目次♦︎
1 肝臓とその働き
2 肝臓がん
2. 1 原発性肝臓がん
2. 2 転移性肝がん
3 肝臓がんの症状
3. 1 原発性肝臓がんの症状
3. 2 転移性肝がんの症状
4 肝臓がんの治療
4. 1 手術
4. 2 ラジオ波焼灼療法(RFA)
4. 3 肝動脈塞栓術
4. 4 分子標的薬
4. 5 放射線療法
4. 6 肝移植
5 肝臓がんの検査
5. 1 採血検査
5. 2 腹部超音波検査(腹部エコー検査)
5. 3 CT検査
5. 4 MRI検査
5. 5 胃カメラ検査
5. 6 大腸カメラ検査
6 肝臓がんの原因
7 診療費用
1 肝臓とその働き
肝臓は胃の横にあり、右の肋骨に守られるようにして位置する体で最も大きな臓器です。肝臓には、再生能力があり、肝臓の2/3を切除しても元の大きさに戻ることができます。肝臓の主な働きには大きく分けて、「代謝」「分解・解毒」「エネルギーの貯蔵」「胆汁の合成」「免疫機能」の5つがあり、我々の生命維持に重要な役割を果たしています。肝臓の機能が低下しても多くの場合、自覚症状に乏しい傾向にあります。(詳しくは肝機能障害の記事も御参照ください)
2 肝臓がん
肝臓がんは「原発性肝臓がん」と「転移性肝臓がん」の2つの種類があります。それぞれの特徴について解説します。
2.1 原発性肝臓がん
原発性肝臓がんとは、肝臓の細胞そのものから発生したがんのことで、発生する部位によって「肝細胞がん」「胆管細胞がん」に分類できます。
① 肝細胞がん
肝細胞がんとは、肝臓の大部分を占める肝細胞に発生する癌のことで、発生頻度が圧倒的に多く、一般的に「肝臓がん」と言うのは「肝細胞がん」を指します。
② 胆管細胞がん
胆管細胞がんは肝内胆管がんとも呼ばれ、肝臓で作られた胆汁を十二指腸へ運ぶ胆管の細胞に発生する癌です。原発性肝がんの3~5%を占め、発生頻度は少ない癌ではありますが、近年、増加傾向にあります。
2.2 転移性肝がん
転移性肝がんとは、肝臓以外の臓器に発生したがんが肝臓に転移した癌をいいます。多くの癌は、その進行に伴い他の臓器へと転移することがあり、その中でも肝臓への転移は、ほぼ全ての癌で起きる可能性があります。
3 肝臓がんの症状
肝臓は、私たちが生きる上でなくてはならない臓器です。肝臓は、多くの働きを担っているのにもかかわらず、症状が現れにくいため、体調のわずかな変化も見過ごさないことが大切です。
3.1 原発性肝臓がんの症状
① 肝細胞がんの症状
肝細胞がんは初期の段階では自覚症状が乏しく、健康診断などをきっかけに発見されるケースがほとんどです。しかし、肝細胞がんの進行に伴い、倦怠感・腹痛・腹部圧迫感・浮腫・腹水・黄疸など、様々な症状が現れます。
② 胆管細胞がんの症状
胆管細胞がんの場合も早期には症状が出ないことがほとんどです。胆管細胞がんは、胆管からがんが発生するために、進行すると胆管内を流れる胆汁の流れが滞り、黄疸症状(身体や目が黄色く染まること)が出やすい傾向にあります。黄疸のほかに、みぞおちや右脇腹の痛み・右肩の痛み・発熱・全身のだるさ・食欲不振・体重減少などの症状が現れます。
3.2 転移性肝がんの症状
転移性肝がんの場合にも初期の段階ではほぼ症状がなく、進行に伴い、倦怠感・腹痛・腹部圧迫感・浮腫・腹水・黄疸など、様々な症状が現れます。
4 肝臓がんの治療
4.1 手術
全身麻酔下での手術による治療は、切除後に肝臓が機能するために十分な肝組織を残せる場合に検討します。手術は、肝臓の癌細胞を全て取り去ることができる根治治療です。しかし、肝硬変が進行し肝機能が低下している場合には、肝移植が検討されることもあります。
4.2 ラジオ波焼灼療法(RFA)
局所麻酔下で、エコーやCTで腫瘍を見ながら、体外から長い針を癌細胞に刺し、癌細胞にマイクロ波やラジオ波を照射する治療です。
4.3 肝動脈塞栓術
肝動脈塞栓術は、足の付け根からカテーテル(細いチューブ)を肝臓がんに血液を供給する肝動脈まで入れ、そのカテーテルに抗がん剤を注入して癌だけを集中攻撃します。また血管を閉塞させることで、その癌への栄養を断ち切り、癌を死滅させます。
4.4 分子標的薬
従来の抗がん剤は、癌細胞だけでなく、正常な細胞にも効果を及ぼしてしまい、副作用が大きいことが問題でしたが、分子標的薬は、がんの進行や増殖に関連する分子をピンポイントに抑えることができる抗がん剤です。近年、肝臓がんに対する分子標的薬が複数開発され、治療の選択肢が増えています。
4.5 放射線療法
癌の浸潤が広範囲に及ぶ場合や、高齢や他の疾患のために標準的治療が困難な場合に、放射線治療を検討します。
4.6 肝移植
他の治療では効果を期待できない場合に肝移植が検討されます。日本では生体肝移植が主であり、生体ドナーとなる親族などがいる場合に限られた治療方法です。
5 肝臓がんの検査
5.1 採血検査
採血検査では腫瘍マーカーを調べます。肝臓がんの人は、AFP(アルファ・フェト・プロテイン)、AFP-L3分画、PIVKA-II(ピブカ・トゥー)などの腫瘍マーカーが高値になります。
5.2 腹部超音波検査(腹部エコー検査)
腹部超音波検査(腹部エコー検査)では、肝臓の状態を詳しく知ることができます。癌の大きさや個数、癌と血管の位置、癌の広がり、腹水の有無などを調べます。超音波検査は身体に害のない非常に有用な検査です。
5.3 CT検査
CT検査では、肝臓の状態をより詳しく調べることができます。癌の大きさや周囲の臓器への広がりや転移を見ていきます。当院でもCT検査を行なっております。詳しくは当院医師までお尋ね下さい。
5.4 MRI検査
MRI検査では、癌の大きさや深さなどをより詳しく調べることができます。
5.5 胃カメラ検査
肝臓がんを患った場合には、胃や食道にも影響が出ていることがあり、胃カメラにて検査が必要です。当院では麻酔を使った寝たままの検査が可能です。当院医師までお気軽にご相談ください。
5.6 大腸カメラ検査
転移性肝臓がんは大腸からの転移も多いため、大腸カメラにて大腸がんの有無を調べる必要があります。当院では麻酔を使用して眠ったまま楽な検査が可能です。当院医師までお尋ね下さい。
6 肝臓がんの原因
転移性肝がんの原因は、肝臓以外の臓器にできたがん(原発巣)が原因となります。特に消化器がん(胃がん・大腸がん・膵がん・胆道がんなど)からの転移が多いと言われます。
原発性肝臓がんの肝細胞がんの主な原因は、慢性肝炎です。肝細胞の破壊と再生が繰り返されると肝臓が硬くなり、肝硬変に進行すると癌化のリスクが高くなります。
胆管細胞がんについては、その原因ははっきりとは解明されていませんが、結石などが関連すると考えられています。
7 診療費用
当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
胃カメラ | 3500円前後 |
大腸カメラ | 9000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
肝臓は沈黙の臓器であり、健康診断で肝臓がんが発見されるケースもありますので、健康に自信がある方も健康診断は定期的に受けることをお勧めします。健康診断をご希望の方は、池袋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。
名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。