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肝硬変

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、肝臓に炎症が起きる肝炎は自覚症状がなく進行し、深刻な病態となっていることがあります。肝炎が続き慢性肝炎となった場合も、やはり大きな自覚症状がないため放置されてしまい、20年ほどかけてじわじわと進行して、肝硬変になってしまいます。

肝硬変を放置すると、今度は肝臓がんへと進行するリスクが高くなります。この記事では、肝硬変について詳しく解説しますので参考にしていただければ幸いです。

◆目次◆

1 肝硬変とは
2 肝硬変の分類と症状
 2.1 代償性肝硬変
 2.2 非代償性肝硬変
3 肝硬変の原因
 3.1 ウイルス感染
 3.2 アルコール
 3.3 生活習慣病
4 肝硬変の治療
 4.1 代償性肝硬変の治療
 4.2 非代償性肝硬変の治療
 4.3 肝移植
5 肝硬変の検査
 5.1 血液検査
 5.2 腹部超音波検査
   5.3   フィブロスキャン検査
   5.4   肝生検
6 肝硬変の予防
 6.1 食事管理
 6.2 便秘対策
 6.3 休肝日を作る
7 診療費用

1 肝硬変とは

肝硬変とは、肝臓が硬くなり、肝機能が低下した状態です。肝臓が硬くなる理由としては、組織の線維化が挙げられます。肝臓に炎症が生じ慢性肝炎を長期間発症すると、炎症を修復するためにできるタンパク質(線維)によって、肝臓の組織が線維化するのです。

進行すると肝臓全体が線維化してしまい肝機能が低下し、様々な症状が現れます。最悪の場合、肝臓がんを発症します。

2 肝硬変の分類と症状

肝硬変は、肝不全症状の有無により2つに分類することができます。

2.1 代償性肝硬変

代償性肝硬変は、肝硬変の初期段階であり、まだ炎症がない正常な肝細胞が肝機能を代償している状態です。つまり肝臓がまだしっかり働いている状態です。

代償性肝硬変は無症状が多い傾向にありますが、倦怠感・疲労感・食欲不振などの症状が現れる人もいます

2.2 非代償性肝硬変

非代償性肝硬変は、肝硬変の中期〜末期まで進行した段階で、様々な症状が現れます。

①黄疸

血液中のビリルビンが増加することにより、皮膚や眼球結膜(白眼)が黄色くなります。また、尿がオレンジに近いような濃い黄色で、泡が立つビリルビン尿になります。

②腹水

肝臓にはタンパク質を作る働きがあるため、肝機能が低下すると血液中のタンパク質が減少し、血液中の水分が血管から外へ染み出し、お腹や手足に水が溜まります。

③出血傾向

肝機能低下によって、本来、肝臓で作られる凝固因子と呼ばれるタンパク質や血小板が少なくなり、出血傾向となり、鼻血や歯茎からの出血が起きるようになります。

④クモ状血管腫

肝機能低下による内分泌異常によって毛細血管が拡張し、クモが足を広げたような形に赤く盛り上がります。肩・二の腕・胸などに出現します。

⑤手掌紅斑

手の親指・小指の付け根に紅斑が現れますが、痛みやかゆみはありません。

⑥女性化乳房

男性にあらわれる症状で、乳房や乳首が大きくなります。肝機能低下によって男性の体内にある女性ホルモン(エストロゲン)の代謝が低下することが原因です。

⑦こむらがえり

肝機能低下によってビタミンB12やビタミンDの代謝障害が起き、これによって筋肉がつりやすくなり、こむらがえりを起こしやすくなります。

⑧食道静脈瘤破裂

肝硬変が進むと消化管から肝臓に流入する血管のひとつである門脈の血液がうまく流れず、滞った状態になります。これによって門脈内の圧力が異常に高くなり、胃や食道の静脈がうっ血し、食道静脈瘤ができます。静脈瘤が大きくなり破裂してしまうと、大量の吐血や下血が起き、血圧が低下し、死に至ることもあります。

⑨肝性脳症

肝臓は体に有害なアンモニアを解毒する働きがありますが、肝硬変が進み肝不全となると、アンモニアを解毒できなくなり、血液中のアンモニア濃度が上昇します。これによって、脳の機能が抑えられ、肝性脳症を発症します。症状が進むと傾眠状態や昏睡に陥り、死に至ることがあります。

3 肝硬変の原因

肝硬変は初期症状がほとんどありませんが、進行すると前述したように様々な症状が起きます。一昔前は、肝硬変は不治の病とも言われていましたが、ワクチンや治療薬の開発など医療の進歩によって、初期段階で原因を排除できれば進行を食い止めることができるようになりました。

肝硬変の原因を明らかにし、適切な治療を早期に行うことが重要です。

3.1 ウイルス感染

C型肝炎ウイルス(HCV)やB型肝炎ウイルス(HBV)などの肝炎ウイルスに感染すると、ウイルス性肝炎から慢性肝炎を起こし、肝硬変へ進行します。

3.2 アルコール

多量飲酒が原因のアルコール性肝炎・脂肪肝から、慢性肝炎(脂肪肝炎)となり、さらに放置すると肝硬変に進行します。比較的短い期間に肝硬変に進んでしまうこともあります。

3.3 生活習慣病

生活習慣病には、高血圧脂質異常症糖尿病・高尿酸血症などがあり、内臓脂肪との関連が強いことが知られています。内臓脂肪が多いと肝臓に中性脂肪が増え、脂肪肝となり、放置すると肝硬変になるリスクがあります。

4 肝硬変の治療

4.1 代償性肝硬変の治療

正常な肝細胞が残っている代償性肝硬変の治療は、規則正しい生活と栄養バランスのとれた食事を基本とし、定期的に検査を受け、経過観察を行います。

アルコール性肝炎や生活習慣病に関連する肝硬変では、禁酒や食生活の改善を行い、肝機能の改善を図ります。

B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎が原因の場合には、表に示すような抗ウイルス薬による治療
を行います。

ウイルス性肝炎治療薬

  一般名 先発品名
抗C型肝炎ウイルス薬 リバビリン レベトール
テラプレビル テラピック
シメプレビル ゾブリアード
アナスプレビル スンベプラ
バニプレビル バニヘップ
グラゾプレビル グラジナ
タグラタスビル ダクルインザ
エルバスビル エレルサ 
ソホスブビル ソバルディ 
 抗B型肝炎ウイルス薬 ラミブジン  ゼフィックス 
アデホビル ペプセラ 
エンテカビル バラクルード 
テノホビル   
ジンフロキシルフマル酸塩
テノゼット
テノホビル   
アラフェナミドフマル酸塩
ベムリディ

4.2 非代償性肝硬変の治療

非代償性肝硬変の治療では、合併症の治療を中心とし、栄養療法も行っていきます。合併症の中でも腹水・食道静脈瘤・肝性脳症の治療は、早急に行う必要があります。

①腹水

水分と塩分を制限し、肝臓を休ませるためにできるだけ安静にします。症状が改善しない場合には利尿剤を投与し、それでも改善しない場合はアルブミン(肝臓で作られるタンパク質)を注射で補います。

②食道静脈瘤

静脈瘤の破裂を防ぐことが重要ですが、自覚症状がないケースが多く、そのため、定期的に検査を行い観察します。

静脈瘤が赤みを帯びてきたら破裂の危険性があるため、治療が必要になります。静脈瘤の状態を見て、静脈瘤結紮(けっさつ)術などの適切な処置を行います。

③肝性脳症

肝性脳症の治療は、食事から摂取するタンパク質を1日40gに制限します。下記のような薬による治療も行います。

  • 合成二糖類:腸内のアンモニアの産生と吸収を減らし、便通を促進します。
  • 難吸収性抗菌薬:腸内のアンモニア産生細菌に作用して、 アンモニアの産生を減らします。
  • BCAA製剤(分岐鎖アミノ酸製剤) :アンモニアの解毒に必要なアミノ酸などを補い、体内のアミノ酸のバランスを調整します。

4.3 肝移植

肝硬変が悪化し、他に治療法のない場合に肝移植が検討されることがあります、肝移植には、生体肝移植と脳死肝移植があります

5 肝硬変の検査

肝硬変の検査は下記の検査を中心に行い、必要に応じてCT検査やMRI検査などの画像検査を行います。

5.1  血液検査

  1. AST(GOT)、ALT(GPT)の数値によって肝臓の炎症の程度がわかります。正常値は30 単位以下と考えられています。
  2. 血小板数の正常値は20 万以上ですが、10 万以下まで減少していると肝臓の線維化が進み、肝硬変に移行している可能性が高いと考えられます。
  3. アルブミン(Alb)は肝臓でつくられるタンパク質で、肝臓の働きが低下すると減少します。
  4. ビリルビン(Bil)が肝機能の低下に伴い増加し、先述の「黄疸」を引き起こします。

5.2 腹部超音波検査

超音波で肝臓を詳しく観察します。肝臓の全体の様子を観察でき、脂肪肝の有無やどの程度の範囲が肝硬変になっているかなどを調べることができます。当院でも超音波検査は行っております。

5.3 フィブロスキャン検査

肝臓の硬さを調べる検査です。体外から肝臓に振動波をあて、その伝わり方から肝臓の硬さを数値で表します。当院ではファブロスキャン検査は行っておりません。

5.4 肝生検

肝臓に針を刺し、組織の一部を採取し、顕微鏡で観察します。炎症の強さや線維化の進行度を判断することができます。当院では肝生検は行っておりません。

6 肝硬変の予防

肝硬変が進行すると、日常生活に支障をきたすほどの大きな健康障害が生じます。そうなる前に、普段の生活で予防することが重要です。

肝硬変の予防を意識した生活習慣は、栄養バランスの良い食事と適度な運動です。以下の点を心がけることが、肝硬変の予防となります。

6.1 食事管理

① 規則正しい食事

食事は1日3回、バランス良く食べましょう。朝食を抜くと、エネルギーを補うために肝臓に蓄えている栄養分をエネルギーに変換する必要が出てくるため、肝臓に大きな負担がかかります。

② 食べすぎに注意

食べすぎは、肝臓に負担をかけるだけでなく、肥満や脂肪肝の原因にもなります。 また、添加物や保存料などは肝臓に余分な負担を与えるため、インスタント食品や加工食品は控えることをお勧めします。

③ 良質なたんぱく質の摂取

肉だけに偏らず、魚や大豆など多品目から摂りましょう 。

6.2 便秘対策

便秘になると、腸内に有害物質が発生します。その有害物質は肝臓の働きによって解毒が行われるため、肝臓に大きな負担がかかることになります。食物繊維や水分を十分にとり、適度な運動を心がけ、便秘予防・改善を行ってください。

6.3 休肝日を作る

週に2日は休肝日を作り、アルコールは適量を心がけましょう。

7 診療費用

当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)

尿検査のみ 2,000円前後
エコー検査のみ 2,500円前後
採血+尿検査 3,500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5,000円前後
胃カメラ 3,500円前後
大腸カメラ 9,000円前後
CT検査 5,000円前後

当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
検診で肝機能障害を指摘された方は、放置すると慢性肝炎や肝硬変になるリスクがあります。普段からアルコールをたくさん飲むため肝臓が心配という方、肝機能に不安を感じるという方は、池袋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。

この記事を執筆した人
久田裕也

名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。

池袋院

大宮院

新橋院

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