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胃潰瘍・十二指腸潰瘍について

かつては国民病といっても過言ではないほど消化性潰瘍の罹患率は高いものでした。近年、消化性潰瘍の罹患率は減少傾向にありますが、それでも消化性潰瘍の患者数は、年間30万人以上とも推測されます。消化性潰瘍は、潰瘍のできる場所によって胃潰瘍と十二指腸潰瘍に分かれます。放置すると、ある日、大量の吐血(血を吐く)が起きたり、腹膜炎を発症し、激しい痛みに襲われることもあります。そうならないためにも早期発見、早期治療が大切です。この記事では、消化性潰瘍と総称される胃潰瘍と十二指腸潰瘍について詳しく解説します。参考にしていただければ幸いです。

漫画でわかる胃カメラ検査
胃内視鏡検査

♦︎目次♦︎

1 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)
 1.1 胃潰瘍とは
 1.2 十二指腸潰瘍とは
2 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の症状
 2.1 胃潰瘍・十二指腸潰瘍で異なる症状
 2.2 胃潰瘍・十二指腸潰瘍で共通する症状
3 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の原因
 3.1 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)感染
 3.2 NSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)
4 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の治療
 4.1 胃酸分泌抑制剤
 4.2 ピロリ菌の除菌療法
 4.3 NAIDSの中止、変更
 4.4手術
5 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の検査
 5.1 血液検査
 5.2 胃バリウム検査
 5.3 腹部超音波検査
 5.4 CT検査
 5.5 上部消化器管内視鏡検査
 5.6 ヘリコバクター・ピロリ菌の検査
6 消化性潰瘍と癌
7 診療費用

1 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)とは

消化性潰瘍は、潰瘍が発生する部位によって胃潰瘍と十二指腸潰瘍に分類されます。胃潰瘍と十二指腸潰瘍は似ている疾患ではありますが、それぞれに特徴的な点もいくつかあります。

1.1 胃潰瘍とは

何らかの原因で胃の粘膜に傷が付き、胃酸がその傷をさらに攻撃し、粘膜の下にある筋層まで傷ついた状態です。胃が分泌する胃酸は非常に強い酸性で食物と一緒に胃に入ってきた細菌を殺菌する働きや食物中のタンパク質を変性させ、消化を助ける働きがあります。

健康な状態では、胃粘膜は薄い膜で保護され、強い酸性の胃酸によって胃粘膜が消化されないための防御機能がありバランスがとれた状態を保っています。しかし、このバランスが崩れてしまうと、胃酸過多の状態となり胃酸の自己消化(胃酸が胃を消化する現象)が起き、胃潰瘍を作ります

1.2 十二指腸潰瘍とは

十二指腸潰瘍は、胃潰瘍と同様に胃酸の分泌と防御機能のバランスが崩れることによって胃酸過多となり、十二指腸粘膜を傷つけ潰瘍ができ、様々な症状が生じる疾患です。十二指腸の壁は胃壁に比べて筋層が薄いため粘膜深くに進行する傾向にあります。

2 消化性潰瘍((胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の症状

胃潰瘍と十二指腸潰瘍の症状は類似していますが、痛みの現れ方に違いがあります。

2.1 胃潰瘍・十二指腸潰瘍で異なる症状

① 胃潰瘍

胃潰瘍の特徴的な症状は食後3~4時間に起きる「みぞおち」の痛みです。食事を摂ることで胃酸の分泌が活発となるため食事中から痛みが出る場合もあります。

② 十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍の特徴的な症状は空腹時に起きる「みぞおち」の痛みと「臍周り」の腹痛です。腹痛は、鈍い痛み、うずくような痛み、焼けるような痛みが特徴です。食事を取ると胃酸が中和されるため痛みが軽くなります。

2.2 胃潰瘍・十二指腸潰瘍で共通する症状

① 食欲低下、体重減少

消化性潰瘍によって、吐き気や嘔吐、食欲低下などの症状から体重減少が起きることがあります。

② 胸焼け、ゲップ

胃酸過多になり胸焼けやゲップなどが起こります。

③ 吐血・下血

消化性潰瘍が症状が進行すると胃壁から出血し血を吐いたり、便に血液が混じり黒色便が出ることがあります。しかし、下血に気づかず、貧血になり胃潰瘍からの出血と気付く場合も少なくありません。

④ 背部痛

消化性潰瘍が進行すると胃と背骨に挟まれる膵臓にまで炎症が広り背中が痛むことがあります。

3 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の原因

『ストレスで胃が痛い』という表現があるようにストレスや生活習慣、暴飲暴食、喫煙などが複雑に影響し合い消化性潰瘍の原因となることも確かですが、現在では具体的な原因が明らかになっています。その具体的な原因とは、ヘリコバクター・ピロリ菌感染とNSAIDSと呼ばれる非ステロイド系抗炎症薬の2つです。

3.1 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)感染

ピロリ菌は胃の粘膜に張り付いて毒素を出す細菌であり、ピロリ菌に感染すると、消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)、慢性胃炎や縮性胃炎、胃がんなどの原因になります。ピロリ菌が出す毒素によって胃粘膜に炎症が起きると、胃の防御機能が低下し潰瘍が発生しやすくなると言われます。ピロリ菌は内服薬によって除菌することができますので詳しくは、ピロリ菌についての記事をご覧ください。

3.2 NSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)

NSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)は解熱・鎮痛・炎症を抑える薬で、風邪などの発熱からリウマチや関節の痛みなど整形外科疾患など医療において汎用される薬です。脳梗塞や心筋梗塞の予防や治療に使用されるアスピリンもNSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)の一種です。様々な疾患の治療に必要とされるNSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)は、痛みに関与するPG(プロスタグランジン)という物質を抑えることで鎮痛・抗炎症作用を発揮します。しかし、PG(プロスタグランジン)には胃の粘膜を保護する働きもあり、NSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)によってPG(プロスタグランジン)の合成が抑えられてしまうと胃粘膜の防御力が低下し、NSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)が直接胃粘膜を攻撃し、潰瘍が発生しやすくなります。NSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)は、痛みや炎症に有効な薬ではありますが、消化性潰瘍に対しては大きなリスクとなります。

代表的なNSAIDs
  一般名 商品名
病院で処方される
NSAIDs
  • アスピリン
  • ロキソプロフェン
  • ジクロフェナク
  • インドメタシン
  • メフェナム酸
  • バファリン
  • ロキソニン
  • ボルタレン
  • インダシン
  • ポンタール
市販の
NSAIDs
  • アスピリン
  • イブプロフェン
  • エテンザミド
  • イソプロピルアンチピリン
  • バファリン
  • ルナ
  • イーシン,新セデス
  • セデス・ハイ

4 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の治療

4.1 胃酸分泌抑制剤

消化性潰瘍は胃酸の分泌が過多となっているため、胃酸の分泌を抑えることが非常に重要です。以前は、ガスターなどに代表される「H2ブロッカー」と呼ばれる薬が多く使われていましたが、最近ではより胃酸を抑える効果が高い「プロトンポンプ阻害薬」(PPI)と呼ばれる薬が主流となっています。PPIによる治療は、胃潰瘍と逆流性食道炎では8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までという投与期間が設けられており、その期間で症状は改善されます。しかし、難治性の場合には、 服用の継続を検討します。

代表的なプロトンポンプ阻害薬(PPI)
商品名 一般名
タケプロン ランソプラゾール
オメプラール オメプラゾール
オメプラゾン
パリエット ラベプラゾールナトリウム製剤
ネキシウム エソメプラゾールマグネシウム水和物
タケキャブ ボノプラザンフマル塩酸

4.2 ピロリ菌の除菌療法

ピロリ菌感染が原因の消化性潰瘍の場合には、ピロリ菌の除菌を行います。抗生物質などの薬を7日服用し治療が完了となります。1回目の除菌を1次除菌と言い、1次除菌による除菌で菌が残っている場合には、2回目の除菌、2次除菌を行います。詳しくはピロリ菌の記事をご覧ください。

4.3 NAIDSの中止、変更

消化性潰瘍の原因で解説した通り、NSAIDSに分類される鎮痛薬の服用によって発症することもあるため、服用を中止、または他の薬に変更します。その際、胃酸分泌抑制薬による治療も行います。

4.4 手術

消化性潰瘍が進行し、穿孔(潰瘍の為に粘膜が破れて穴があいた状態)ができた場合には、内視鏡手術や外科手術を行う場合もあります。

5 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の検査

5.1 血液検査

炎症反応(白血球やCRPの)や貧血(ヘモグロビンの数値)消化管からの出血を示唆するBun/Cre 比などを調べます。

5.2 胃バリウム検査

胃バリウム検査は、胃潰瘍などの病変がある場合、病変部位の粘膜には凸凹ができるなどの変化が映し出されます。当院ではバリウム検査は行なっておりません。

5.3 腹部超音波検査

胃や十二指腸に潰瘍がある場合、内壁の壁肥厚と中央の凹みがで潰瘍があることが分かります。超音波検査は身体に負担の無い非常に有用な検査です。

5.4 CT検査

穿孔がある場合にその深さや詳しい病態を調べることができます。消化管から空気が漏れているかどうかの確認も出来ます。当院でもCT検査は可能です。

5.5 上部消化管内視鏡検査

胃だけでなく食道や十二指腸を直接観察でき、必要に応じて生検(組織を切除して検査を行う)を行い、癌の可能性を否定することも可能です。当院では麻酔を使用して苦しまない胃カメラ検査を行なっております。詳しくは当院医師までお尋ね下さい。

漫画でわかる胃カメラ検査
胃内視鏡検査

5.6 ヘリコバクター・ピロリ菌の検査

消化性潰瘍の原因となるピロリ菌の有無を調べることは必須とも言えます。ピロリ菌の検査には内視鏡を使う方法と使わない方法があります。

内視鏡検査を行う場合
① 迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が排出するアンモニアを調べます。

② 検鏡法

採取した組織を染色することでピロリ菌の菌体を顕微鏡で観察することができます。

③ 培養法

採取した組織を用いて培養します。ピロリ菌が存在した場合、培養によってピロリ菌が増えます。

内視鏡で観察した胃潰瘍

内視鏡を使用しない方法
① 血清抗体測定

ピロリ菌に感染するとピロリ菌に対する抗体をつくるため、血液中にこの抗体が存在するかを調べます。こちらの方法は、胃カメラを行った上で保険適用となります。

② 尿素呼気試験

ピロリ菌に感染しているとピロリ菌が持つウレアーゼという酵素により、胃の中の尿素を分解しアンモニアと二酸化炭素を生成するため、呼気中に二酸化炭素が多く排出されます。検査薬を服用し、呼気中に二酸化炭素を測定します。

こちらの方法は、胃カメラを行った上で保険適用となります。

③ 便中抗原測定法

糞便中のピロリ菌抗原を調べます。こちらの方法は、胃カメラを行った上で保険適応となります。

6 消化性潰瘍と癌

消化性潰瘍は自覚症状に乏しい場合に放置されてしまったり、治療をしても消化性潰瘍を繰り返してしまう場合には、癌化する可能性や癌が隠れている可能性もあります。特にピロリ菌の感染者は胃がんのリスクが約5倍に高まることが分かっています。また、ピロリ菌は5歳までの間に感染すると言われ、年齢が感染期間と考えても大袈裟ではあません。ピロリ菌への感染期間が長いほど癌化の危険性も高くなりますので、お若い方でも一度はピロリ菌の検査を受け、早めに除菌することをお勧めします。

7 診療費用

当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
胃カメラ 3500円前後
CT検査 5000円前後

当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーにに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。

空腹時のみぞおちの痛みや食中、食後の腹痛、体重減少、黒色便などの症状があるという方は、池袋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。

この記事を執筆した人
久田裕也

名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。

池袋院

大宮院

新橋院

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