血尿(尿に血液が混じる、健康診断で尿潜血を指摘される)
尿に血液が混じる「血尿」は、尿に血液が混じっていることが目で見て認識できる肉眼的血尿と、肉眼的には認識できなくても検査で尿中に血液を認める顕微鏡的血尿があります。
いずれの場合でも検査で「血尿が出ています」と指摘されれば、誰もが驚かれると思います。
血尿と一言に言っても問題がない場合もあれば、何らかの病気のサインの場合もあります。膀胱がんなどの大きな病気が隠れていることもあります。このページでは、血尿について分かりやすい言葉で解説していきますので参考にしていただければ幸いです。
◆目次◆
1 血尿とは
2 血尿の原因
2.1 膀胱がん
2.2 尿管結石・腎結石
2.3 前立腺がん
2.4 尿道炎
2.5 膀胱炎
2.6 前立腺炎
2.7 腎盂・尿管癌
2.8 特発性腎出血
2.9 腎臓内科的疾患
2.10 原因不明
3 血尿の検査
3.1 尿検査
3.2 採血検査
3.3 超音波検査
3.4 CT検査
4 血尿の治療
5 診療費用
1 血尿とは
血尿には、目で見える肉眼的血尿と目には見えない顕微鏡的血尿の2種類があります。肉眼的血尿は、大きな病気が隠れている可能性があり、肉眼的血尿が認められた場合は、採血検査、超音波検査、尿検査、膀胱にカメラを入れる膀胱鏡などの精密検査を必要とします。
顕微鏡的血尿は、異常がないことが多いのですが、稀に大きな病気の前兆であることもあり、それを見逃さないためにもしっかりとした精密検査をすることが推奨されます。健康診断や人間ドックで血尿を指摘された 、もしくは、ご自身で血尿に気づいた方は泌尿器科を受診することが必要です。
2 血尿の原因
2.1 膀胱がん
血尿が見られた際に疑う病気の中での最も怖い病気の一つが「膀胱がん」です。俳優の松田優作さんや菅原文太さんなど膀胱がん、に罹患した芸能人や著名人も多く、膀胱がんは多くの人が知る病気だと思います。しかし、膀胱がんのサインとなる症状はあまり知られていないため、発見が遅れるケースもあります。
膀胱がんは、膀胱の表面の膀胱上皮にできる悪性腫瘍で、肉眼的血尿を伴うことが多くありますが、早期には痛みや頻尿(尿の回数が多くなること)、残尿感(排尿後に残っている感じがすること)などの症状を認めないことが特徴です。症状がなく血尿がでるだけの症状を無症候性肉眼的血尿と言います。 出血に気づいて受診される方が多いのですが、その段階ではほとんどが早期の膀胱がんです。
しかし、血尿が出たり出なかったりと頻度が不定期であったり、止まってしまうこともあります。血尿がなくなったからと受診せず数ヶ月〜数年放っておくと膀胱がんは、進行してしまいます。
膀胱がんが進行すると頻尿や残尿感、排尿時の痛みが伴います。症状が出てから受診すると膀胱を全て摘出しなければいけないような進行性の膀胱がんになっていることもあるので、肉眼的血尿に気づいたらすぐに泌尿器科を受診することをお勧めします。
2.2 尿管結石・腎結石
腎臓で結石ができると、結石は腎盂から尿管、そして膀胱と下降します。結石は、存在する部位によって痛み・血尿・発熱といった症状を起こします。図に書いたように腎臓に結石がある時点では痛みはほとんどありませんが血尿を伴う場合があります。尿管結石になると、その痛みは非常に強く、「痛みの王様」と言われ、血尿を伴うことが多くありますが、発熱はほとんどありません。
尿管結石では、血尿の有無にかかわらず痛みが非常に強いため、病院を受診する方が多くいらっしゃいます。腎結石では、結石が腎臓内にあるうちは、多くの場合、痛みなどの症状が見られないため、ほとんど治療することはありません。尿管結石は、基本的には自然に結石が排出される自然排石を待ちます。自然排石しない場合は内視鏡的な治療や体外衝撃波の治療をします。詳しくはこちらをご覧ください。
2.3 前立腺がん
前立腺がんは2025年には日本の男性で1番多くなると言われています。初期では血尿を伴いませんが、進行すると血尿や膀胱刺激症状(頻尿や残尿感など)、排尿時痛、尿の勢いがなくなったりすることがあります。初期では、ほとんど無症状のため、患者さんが自ら気づくことはなく、検診等で採血検査を行った際にPSA(prostate specific antigen 前立腺特異抗原)の)値が高いことで気づきます。PSA値が高く、前立腺針生検で癌と診断された後に治療法の選択をします。直ちに治療が必要ではないと判断された場合には、PSA監視療法(3か月間隔でPSA採血を行い、急激な数値の上昇 が無いことを確認する治療法)を行う場合があります。また、治療が必要な前立腺がんと診断された場合には、男性ホルモンを抑える内分泌療法や放射線療法、手術療法などによる治療を行います。最近では、ロボット手術などの最新の手術治療を行う病院もあります。
近年では、治療法が進歩し、多くな場合前立腺がんはすぐに死に至る病気ではなくなりましたが、中には前立腺がんが進行し深刻な症状となるケースもあり、決して前立腺がんを甘く見てはいけません。PSA値が高く、血尿を伴う場合は前立腺がんを疑い、検査を行うべきですので、できるだけ早く泌尿器科を受診してください。
2.4 尿道炎
尿道炎とは、尿道から細菌などが侵入、感染し発症する感染症です。尿道炎は、男性の病気であり、女性は尿道炎になることはあまりありません。尿道炎の原因の多くは性行為感染症であり、クラミジア尿道炎や淋菌性尿道炎が尿道炎の主な原因です。その症状は、排尿痛、尿に血が混じる・濁る、尿道から膿が出るなどがあり、抗生剤の投与で症状は改善します。排尿痛、血尿などの自覚症状がある場合は、早めに受診しましょう。
2.5 膀胱炎
膀胱炎は、大腸菌が尿道から膀胱に侵入することによって起こる炎症であり、膀胱炎は頻尿、残尿感、排尿時痛、血尿が主な症状です。男性は膀胱炎になることがほとんどなく、圧倒的に女性に多い病気です。その理由は、女性は尿道が短く、外界からすぐに細菌が膀胱の中に入り込み易いことにあります。
膀胱炎は疲れやストレスがたまっているときなど、体の抵抗力が落ちているときになりやすい傾向にあります。また、膀胱の中に入った細菌が膀胱の中にいる時間が長くなればなるほど感染は広がっていくので、トイレに行くのを長時間我慢すると発症のリスクが高まります。膀胱炎の治療は抗生剤を3-5日間内服することです。
2.6 前立腺炎
急性細菌性前立腺炎は前立腺肥大症を伴う男性に起こりやすい傾向にあります。前立腺肥大により排尿の勢いがなくなるため、排尿後に残尿が多くなり大腸菌などの細菌が前立腺に入り込み炎症を起こすことを急性細菌性前立腺炎と呼びます。
慢性前立腺炎は、採血や尿検査や超音波検査では異常を認めませんが、排尿時の違和感・足のしびれ、痛み・残尿感などを認めます。急性細菌性前立腺炎は酷くなると血尿を伴うことがあります。慢性前立腺炎ではほとんど血尿は見られません。急性細菌性前立腺炎の治療は抗生剤の投与が基本ですが、症状が悪化し尿が出なくなった場合には、尿道カテーテルを入れ、尿を外に出します。
慢性前立腺炎の治療は漢方薬やα1ブロッカーなどの投薬を行います。
2.7 腎盂・尿管癌
腎盂や尿管にできる癌によっても血尿が見られることもあります。癌は細胞が脆く壊れやすいため、そこが出血してぽろぽろと落ちて尿に混ざるため血尿となって現れます。腎盂癌や尿管癌は、膀胱がんなどに比べると非常に稀で発症頻度は膀胱がんの約20分の1と言われます。
治療は腎盂尿管全摘除術(片方の腎臓と尿管を一塊にして摘出します)という腹腔鏡手術が適用になります。当院で腎盂癌や尿管癌が見つかった場合は、適切な病院にご紹介させて頂いております。
2.8 特発性腎出血
特発性腎出血(突然原因もなく腎臓から出血すること)とは原因不明の腎臓からの出血の総称で血尿として現れます。特発性腎出血の多くは基本的に良性疾患ですが診断が難しく、肉眼的血尿から考えられる癌などの怖い病気の可能性を検査によって除外して診断を行います。
また、血尿が長く続き原因が特定できない場合などは、全身麻酔を行い尿道から膀胱を通じて片方の尿管まで尿管鏡というカメラを入れ、腎臓から出血していることを確認し、特発性腎出血であると確定診断を行うこともあります。
2.9 腎臓内科的疾患
以上に挙げた泌尿器科的疾患による血尿は、腎臓から尿が作られた後に血液が混じる病気です。これとは別に稀ではありますが、腎臓内科的疾患による血尿があります。腎臓内科的疾患のIgA腎症や糸球体腎炎などでは、腎臓の中で尿が作られる過程で出血をすることがあり、血尿が表れることがあります。腎臓内科的疾患が疑われる場合は腎臓内科にご紹介させて頂いております。
2.10 原因不明
血尿があり、疑わしい疾患について検査をしても異常が認められないことがあります。その場合は、癌などの悪性疾患でないことを確認するため数ヶ月間程度は経過観察を行うことが推奨されます。具体的には、画像検査や尿の中に癌細胞がないかを確認する尿検査
(癌細胞は脆いため剥がれて尿に混じってくるため、顕微鏡で癌細胞の有無を確認することができます)などを数ヶ月にわたって行い悪性疾患の可能性を否定します。検査を進める中で悪性疾患が疑われた場合には、適宜CT検査や超音波検査を行います。
3 血尿の検査
3.1 尿検査
尿検査は、泌尿器科にとって非常に重要な検査であり、尿の中に癌細胞や白血球、赤血球、細菌がないかを見ます。白血球があれば感染を疑い、赤血球があれば出血を疑います。
3.2 採血検査
採血検査では、前立腺がんの可能性、腎臓機能低下、体内の炎症の有無を確認をします。また、血尿が臓器からの出血による場合、出血量が多いと貧血になっている場合もあり血尿の検査に採血は必要な検査になります。
3.3 超音波検査
超音波検査は、放射線も使用せず、体に害もなく、痛みも伴うこともない簡便な検査です。超音波検査によって前立腺や腎臓、膀胱に大きな異常がないかを確認できます。しかし、超音波検査で解ることは限られるため、異常が認められた場合には、さらにCT検査で細かく検査をします。
3.4 CT検査
CT検査では、尿管結石なども非常にわかりやすく判断でき、尿の通り道に癌がないかも詳細に分かります。放射線を浴びるのでごく僅かな被曝がありますが、それが原因で健康被害が起きるようなことはありませんので安心して受けていただけます。
4 血尿の治療
2の血尿の原因で述べたように、その原因は様々であり、血尿には、治療を必要としない軽症の場合と進行すれば命を脅かす病気のサインの場合があります。基本的には病気は、早期発見早期治療が大切ですので血尿を認めた際は、早めに泌尿器科を受診して下さい。
5 診療費用
当院は全て保険診療です。
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
膀胱鏡検査 | 4000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)
当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーにに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
血尿に困った方は必ず自分で抱え込まず、池袋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。
執筆 泌尿器科専門医 伊勢呂哲也