大腸がんについて
近年、大腸がんは日本で一番罹患率の高い癌で50代から増加する傾向にあり、男性はおよそ11人に1人、女性はおよそ13人に1人が、一生のうちに大腸がんと診断されると言われます。2019年の統計では、大腸がんは女性の癌による死亡数の第1位,男性の第2位となっています。一方で医学の進歩により、大腸がんは早期に発見できれば、完治出来る疾患となっています。この記事では、大腸の役割について解説し、さらに大腸がんについてお話しさせていただきます。
♦︎目次♦︎
1 大腸とは
1.1 大腸の構造
1.2 大腸の働き
2 大腸がんとは
2.1 大腸がんの初期症状
3 大腸がんの原因・リスクと予防
3.1 大腸がんの原因・リスク
3.2 大腸がんの予防
4 大腸がんと大腸ポリープ
5 大腸がんの検査
5.1 便潜血検査
5.2 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
5.3 CTC(CT Colonography)検査
5.4 MRI検査
5.5 超音波検査
5.6 血液検査
6 大腸がんの治療
7 診療費用
1 大腸とは
1.1 大腸の構造
大腸は、長さ約1.5〜2m、直径約5〜7cmで小腸を取り囲むように時計まわりにほぼ一周し肛門へ繋がります。大腸は、盲腸、結腸、直腸に分かれ、結腸はさらに上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。
1.2 大腸の働き
私たちが食事を取ると、食物は咽喉、食道、胃、小腸、大腸を通り消化され、肛門から便として排出されます。小腸で消化吸収された食物の残りが大腸へ運ばれ、大腸ではその食物残渣から体内に水分を吸収します。大腸で水分を吸収された食物残渣は、固形の便となります。健康な大腸では、この水分吸収によって適度な硬さの便が作られますが、なんらかの原因で水分の吸収が過剰になると便が硬くなり便秘に、水分吸収が少ないと便の水分量が多くなり軟便や下痢を起こします。便の状態は、大腸の健康状態を表すとも言えますので毎日、チェックすることをお勧めします。便の状態は、下記のようなブリストルスケールで評価することができ、バナナ状の便が健康な腸の状態です。
また、排便の習慣が変わった場合、大腸に何らかの異常があるサインの可能性もあります。
2 大腸がんとは
大腸がんは早期発見、早期治療できれば、非常に治癒率も高く予後の良い癌です。統計的には、50代以上の罹患率が高い癌ですので市町村で行われる検診などを必ず受けることをお勧めします。また、便に血液が混じるなどの症状がある患者様は消化器科を受診しましょう。
2.1 大腸がんの初期症状
大腸がん早期では、自覚症はほとんどありませんが、注意すべき症状がいくつかあります。下記のような症状があれば要注意です。しかしながら、どの症状も他の疾患に由来する可能性もあり、確定診断を行うには検査が必要ですので、あくまで参考としていただき、気になる症状があるときは医療機関への受診をお勧めします。
①便の変化
定期的な排便習慣があったものが、便秘や下痢をするようになった。また、便秘と下痢を繰り返すなどが継続して起きる場合には、大腸がんのサインかもしれません。
②血便
明らかな鮮血がある場合には、気付くことが容易だと思いますが、注意すべきは鮮血だけではありません。褐色便や黒色便も出血の可能性がありますので、排便のあとは、色を含め便の状態を確認することが大事です。
③体重減少
食生活や生活習慣が変わらないにも関わらず、体重が減少し、痩せていくという場合も要注意です。大腸がんになると癌細胞が増殖するために脂肪やたんぱく質を分解していき、食べているのに痩せるという現象が起きることがあります。5キロ以上の体重減少がみられる方はクリニックや病院に相談しましょう。体重減少には大腸がん以外にも他の癌など怖い病気の可能性があります。
④貧血
大腸がんによって癌細胞が増殖する過程で癌細胞は新生血管(既存の血管から分岐する新しい血管)を作り出すことによって、酸素や栄養を取り込んでいきます。正常な過程で作られていない新生血管は脆弱です。つまり出血しやすい傾向にあります。その新生血管から出血がジワジワと続くことがあり、そうなると出血による鉄欠乏性貧血が起きることがあります。鉄欠乏性貧血では、酸素を運ぶ役割のある赤血球の中のヘモグロビンが減少するため立ちくらみなどの症状が出ることがあります。
⑤お腹の痛み・張り
お腹の痛みは様々な要因で起きるもので一概に大腸がんとは言えませんが、注意が必要です。また、お腹の張りは、ガスが溜まっているサインでもあり、癌があることで大腸が塞がり、大腸の通りが悪くなっている可能性もあります。
3 大腸がんの原因・リスクと予防
3.1 大腸がんの原因・リスク
食の欧米化により大腸がんの罹患率が高くなっていると言われますが、他にも注意すべき大腸がんの原因・リスクがあります。
①加齢
50代以降の大腸がんの罹患率は増加しますので、毎年の便潜血検査と3年に1度の大腸内視鏡検査が推奨されます。
②遺伝
遺伝性大腸がんがあり、特に家族性大腸腺腫症(Familial adenomatous polyposis:FAP)は放置すれば、ほぼ100%大腸がんを発症すると言われます。ご家族に大腸がんになった方がいる場合は、遺伝性大腸がんカウンセリング外来などへ相談することをお勧めします。
③アルコール
アルコール摂取量が、1日に15g(缶ビール350ml相当)増えるごとにリスクは 10%上昇することが分かっています。過剰な量のアルコール摂取は生活習慣病や肝臓の病気にも繋がります。アルコールは適量に控えましょう。
④喫煙
喫煙者は非喫煙者に比べ、大腸がんの発生率は 1.4 倍との研究報告もあります。喫煙も心臓病や生活習慣病の発生リスクを上昇させます。喫煙は百害あって一利なしでしょう。
⑤赤身肉・加工肉の摂りすぎ
赤肉・加工肉の摂取は大腸がんのリスクを上げるとの研究報告が複数あります。
3.2 大腸がんの予防
前述したように大腸がんのリスクには様々な要因があり、これをすれば良いという絶対的な予防策はありませんが、アルコールや禁煙などのリスクを避け、食事や生活習慣を見直すことで腸内の環境をよい状態にすることが、大腸がんのみならず健康維持の鍵となるでしょう。
4 大腸がんと大腸ポリープ
近年、大腸ポリープも増加の傾向にあります。大腸ポリープは、腫瘍性と非腫瘍性があり、非腫瘍性ポリープは全て良性であり癌化することはありません。一方の腫瘍性ポリープは増殖する性質がありますが、その中でも良性と悪性があり、悪性のものが癌化していきます。癌化する前に発見し、切除することができれば大腸がんを予防することができます。そのためには、定期検診や健康診断が非常に重要となります。
5 大腸がんの検査
5.1 便潜血検査
便潜血検査は、大腸がん検診のスクリーニング検査として一般的な検査で40歳以上を対象にした市町村単位での検診でも採用されています。大腸がんの約30%以上が、便潜血検査をきっかけに発見され、そのうちの70%が自覚症状のない早期がんとの統計があります。
5.2 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
前述した便潜血検査は、利便性のある検査ではありますが、検査の感度(病気を見逃さない能力)は、進行癌で80~90%、早期癌では50%程度と言われます。便潜血検査で大腸がんを見逃す可能性もあり、大腸がんリスクの高い方は、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を詳しく画像を見ながら調べ、大腸がんが疑われる病変があればその一部または病変全てを切除し、組織を詳しく調べる病理検査を行います。当院でも大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行っております。麻酔を使用した大腸内視鏡検査(大腸カメラ)も可能です。詳しくは当院医師までお尋ね下さい。
5.3 CTC(CT Colonography)検査
通常のCT検査では、大腸がんの腫瘍が小さい場合には感度が低く、大腸の状態をより詳しく評価するCTC(CT Colonography)検査が適しています。CTC検査では検査前日には、事前に処方された検査食を食べ、夜には下剤を服用し、大腸の中をきれいにし、翌日検査を実施します。当日の検査では、肛門からCTC専用の炭酸ガスをゆっくり注入し、大腸を膨らませた状態でCT撮影を行います。検査時間は15分程度で、検査終了後、炭酸ガスは腸管から速やかに吸収されますので腹満感もすぐに改善します。CTC検査は体への負担が少なく、かつ、大腸の内側の病変まで精密に調べることができ、大腸がんスクリーニング検査として信頼度が高い検査であり、大腸内視鏡検査に抵抗のある方にも受けていただけます。しかし、CTC検査によって大腸に腫瘍が見つかった場合には、病理検査による確定診断が必要となるため、さらに大腸内視鏡検査を行うことが必要です。現在当院では行っておりません。もし開始した際にはお知らせ致します。
5.4 MRI検査
MRI検査では、大腸がんと診断された場合に周囲臓器への浸潤や、肺や肝臓への転移の有無などを調べます。
5.5 超音波検査
大腸がんの肝転移やリンパ節転移がないか、大腸がんによる腸閉塞の有無、周囲臓器への浸潤を調べます。超音波検査は身体に負担やダメージが無い非常に有用な検査です。
5.6 血液検査
血液検査では、大腸がんに特有の腫瘍マーカー(CEA・CA19-9)を調べることで病気の進行度や治療効果の判定に役立つ場合があります。しかし、大腸がんの早期では腫瘍マーカーの値は正常の場合が多く、進行がんでも腫瘍マーカーの値が上昇しない場合もあり、他の検査と合わせて総合的に診断します。
6 大腸がんの治療
大腸がんの治療には、手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療、免疫療法があり、進行の程度によって適する治療法が異なり、通常は患者さんの希望を尊重しながら医師と相談の上、治療法を決定します。
0期〜1期:早期がんであり、内視鏡手術により切除を行い、治癒、完治する可能性が極めて高く、術後5年再発しない場合は完治と評価します。
2期〜3期:ステージ2期は進行癌でリンパ節転移がありません。ステージ3期は、進行癌でリンパ節転移があります。開腹手術を検討し、状況によって化学療法(抗がん剤治療)を合わせて行います。
4期:ステージ4期は、肺や肝臓に転移があります。化学療法(抗がん剤治療)を行い癌を縮小した後、手術を行う場合もあります。手術によって治療効果を望めない場合も多く、特に積極的な治療をしない緩和ケア(痛みなどを取る治療)に移行する場合もあります。
*当院では大腸がんの治療は行っておりませんので、検査で大腸がんが疑われた際は、必要な検査、治療ができる医療機関へ紹介状をお出しします。
7 診療費用
当院は全て保険診療です。初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
胃カメラ | 3500円前後 |
大腸カメラ | 9000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
便秘や下痢を繰り返す、腹部が張る感じがある、血便に気付かれたという方は、池袋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。
名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。