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前立腺がんについて

こちらのページでは前立腺がんについてお話ししたいと思います。
前立腺がんは2025年には日本の男性の罹患率1位になる癌と言われています。すぐに死に直結するがんではないのですが、前立腺がんがあるのに放っておくとやがて命に関わることにもなります。前立腺がんはしっかりとした診断と治療を行えば死に直結しない癌と言われてます。PSAが高いと検診で指摘された方や親族に前立腺がんの方がいる場合はこのページを読んでいただいて必要な方はぜひ一度泌尿器科を受診しましょう。

◆目次◆

1 そもそも前立腺とは
2 前立腺がんが増えている理由
3 前立腺がんの症状
 3.1 早期の前立腺がん
 3.2 進行した前立腺がん
4 前立腺肥大との違い
5 前立腺がんの検査
 5.1 尿検査
 5.2 採血検査
 5.3 超音波検査
 5.4 CT検査
 5.5 MRI検査
 5.6 前立腺生検
6 前立腺がんの治療
 6.1 PSA監視療法
 6.2 手術療法
 6.3 放射線療法
 6.4 ホルモン治療
 6.5 重粒子線治療
7 診療費用

1 そもそも前立腺とは

図のように前立腺は膀胱にくっついて、尿道を取り囲んでいます。一般の成人男性ではクルミ程の大きさの臓器です。前立腺は男性にしかない臓器で、前立腺液という精液の一部を分泌する役割をしています。前立腺肥大症や前立腺がんになると尿道が圧迫されておしっこが出にくい、頻尿になるなどの排尿障害がおきます。前立腺という臓器は基本的に良い働きをすることはなく、男性にとって害しかない憎らしい臓器なのです。

また前立腺がんは死に直結しにくい癌であるとはいえ、前立腺がんを放置すればいずれ進行して転移し、命に関わることもあります。しかるべき診断と治療を行えば命を落とすことにはならないので、泌尿器科の受診は大切です。

2 前立腺がんが増えている理由

前述した通り前立腺がんは2025年には日本人の男性の罹患率(かかっている人の割合)第一位になる癌とされていますが、欧米諸国では現在罹患率第一位となっています。日本での前立腺がんが増加している一番の原因は食の欧米化とも言われています。乳製品や肉類を多く摂取する欧米型の食事や刺激物、アルコールや香辛料の過剰摂取は前立腺がんを引き起こす要因とされています。

またPSA検査(Prostate-Specific Antigen,前立腺特異抗原検査)の普及により前立腺がんが一昔前よりも発見されやすい環境になったことも原因の一つと言えます。そして長寿になるとがんも増加していくため、日本人が長寿になったことも原因の一つです。最新の論文によりますと、亡くなった方(前立腺がんとは関係の無い方)を解剖した時に、3人に一人は前立腺がんが見つかったというデータもあるくらいです。

3 前立腺がんの症状

前立腺がんの症状には早期と進行した場合とに分かれます。それぞれ詳しく後述します。前立腺がんに罹る人は多いのですが、死亡する方はあまりおらず死亡率は第6位となっています。前立腺がんはすぐに死に直結する癌というわけではないのですが、前立腺がんを疑う症状があった場合や検診などでPSAの値が高いと指摘された方は泌尿器科の受診をした方が良いでしょう。

3.1 早期の前立腺がん

早期の前立腺がんの症状はほとんどありません。図のように前立腺がんは前立腺外側の外腺からできてくるので尿道に与える影響が少なく、頻尿などの排尿障害を起こすことがありません。主だった症状はなくとも、PSAの数値が高くなっているということがあります。(PSAの値に関してはこちらで詳しく解説しています
PSAは前立腺の中にある酵素の一部です。前立腺がんがあるとその酵素の一部のタンパク質が血中に漏れ出てきます。血液中のPSAの値が高くなると前立腺がんの疑いがあります。無症状でもPSAの値が高い人は一度きちんと診察を受けましょう。またPSA検査は定期健診などではオプションになっていることもありますので、特に前立腺がんは50歳以上になると急激に増加する傾向にあるため何の症状もない方でも定期検診などでは必ずPSA検査を取り入れるようにしましょう。

3.2 進行した前立腺がん

前立腺がんが進行してくると尿道にも悪影響を及ぼします。尿道を圧迫してくるため、おしっこの出が悪くなったり、頻尿になったり血尿が出るなどの症状がみられます。また前立腺がんが体の他の箇所に転移するとその部位が痛むことがあります。特に前立腺がんは腰の骨やリンパ節に転移しやすいため、腰の骨に転移した場合には腰痛を伴います。進行して末期になってくると食欲不振や体重減少といった症状もみられます。

4 前立腺肥大との違い

前立腺肥大症というのは図のように前立腺の中側が大きくなって尿道を圧迫するため、早い段階から頻尿、残尿感、尿の勢いが弱いなどの排尿障害・蓄尿障害が出てきます。前立腺がんはこのような初期症状がないのが前立腺肥大との大きな違いです。ただし前立腺肥大症もPSAの値は高くなります。PSAの値が高いからといって必ずしも前立腺がんであるとは限らないのです。
前立腺肥大症は良性ですので前立腺の中だけで大きくなります。腰の骨など体の他の部位に転移することはありません。前立腺肥大症は超音波検査で正確な大きさや位置が確認でき、経尿道的前立腺切除術という尿道を通しでの内視鏡的手術が可能ですので、もし前立腺肥大症が酷くなったとしてもお腹に傷をつけて大きな手術をするということはほとんどありません。

5 前立腺がんの検査

5.1 尿検査

尿検査は泌尿器科の検査の中でも非常に大事な検査になります。初期の前立腺がんで尿検査に異常が見られることはないのですが、前立腺がんが進行してくると血尿や白血球が混じることもあります。尿検査は腎臓の病気や膀胱、尿道などの泌尿器の病気など多くのことがわかるので検査をした方がいいでしょう。

5.2 採血検査

前立腺がんにとって採血検査は最も大事な検査です。PSAという値を見ることで前立腺がんがあるかないか、疑いがあるかを判断できます。PSAの値は前立腺がんの進行度合いを測る指標にもなってきますので、前立腺がんと診断された後もPSA値の上がり下がりで進行しているのか、治まっているのかを判断します。

5.3 超音波検査

超音波検査では前立腺のがんの有無をある程度見ることができます。前立腺肥大症においては有無だけでなく大きさや位置の確認ができます。超音波検査は痛みも伴わず被曝しない体に優しい検査です。

5.4 CT検査

CT検査では前立腺がんが肺や腰の骨、リンパ節などに転移していないかどうかがわかります。CT検査はある程度の被曝はしますが、お腹の中や胸の中が詳細にわかる非常に有用な検査です。当院でもCT検査は行っております。

5.5 MRI検査

MRI検査は前立腺の中が詳細にわかるのでがんの場所を特定できます。PSAの値が高く、前立腺がんの疑いがある場合に行う検査です。

5.6 前立腺生検

前立腺生検は直接針を刺して前立腺の組織をとる検査です。PSAの値が高く、MRI検査で前立腺のがんがあると疑った場合に行います。当院では行っていない検査ですが、前立腺生検が必要となった場合には適切な病院を紹介させていただきます。

6 前立腺がんの治療

6.1 PSA監視療法

前立腺がんと診断した後でPSAの数値が10以下で転移もないという場合はPSA監視療法という治療も可能です。PSA監視療法は特に何かをするというわけではなく、3ヶ月に一度PSAの数値を見て上昇していなければ前立腺がんは進行していないと判断して様子を見ます。PSAの数値が上昇している場合は他の治療が必要な前立腺がんと判断し、後述する手術療法やホルモン療法、放射線療法などに移行する必要があります。

6.2 手術療法

前立腺がんの手術は昔は開腹手術が主流でしたが、現在では腹腔鏡手術、ロボット支援下手術が主流になっています。開腹手術では出血量の多さがネックでしたが、腹腔鏡手術やロボット支援下手術ではお腹に小さい穴を数カ所開けるだけで済むので出血量は少なく済みます。術後の回復も開腹手術よりも早く、手術による合併症として腹圧性尿失禁という尿もれや勃起不全がありますがこれらの合併症も開腹手術よりもロボット支援下手術の方が少ないというメリットがあります。ただしどの手術においてもある程度の合併症は伴いますし体にも負担がかかります。そのため体力的なことも考えると手術は若い人に行うことがほとんどで75歳以上の方にはあまりおすすめしない場合が多いです。最近では個人差もあり高齢の方でも体力がある方もいらっしゃいますので、専門の泌尿器科の先生とよく相談して決めましょう。ただしどの手術療法も基本的には転移をしていなく癌が前立腺内にとどまっている場合に行われます。

6.3 放射線療法

放射線療法も前立腺に腫瘍が限定される場合に行われます。今までの放射線療法では直腸などの前立腺の周囲の臓器にも影響を与えてしまっていたのですが、最近の放射線療法の中でも特に重粒子線治療(後記参照)は、前立腺に照準を合わせて当てることができるようになり副作用も少なくなっています。放射線療法の合併症としては勃起不全、放射線性の膀胱炎、頻尿、直腸炎、放射線性の皮膚炎などがあります。

6.4 ホルモン治療

前立腺がんというのは、ホルモンに依存して成長していくため、男性ホルモンを抑えることで前立腺がんの進行を抑えることができます。ホルモン療法は根本的に前立腺がんを治療するというよりも前立腺がんの進行を抑えていくという治療です。80歳以上の高齢の方にはこのホルモン療法は適しています。手術療法や放射線療法での合併症や体力の消耗によって余命を縮めてしまうことがないように、ホルモン療法で10年ほどは進行を止められると判断をした上で行います。基本的には飲み薬と注射ですが、どちらか一つという場合もあります。

6.5 重粒子線治療

放射線治療の一つである重粒子線治療は2018年の4月より前立腺がんの保険適用になりました。従来の放射線療法で用いられるエックス線、ガンマ線ではどうしても周囲の正常な臓器も攻撃してしまうため、強い副作用が避けられません。それに対して重粒子放射治療はがん細胞だけに照準を合わせて集中的に攻撃をするため、周りの正常な細胞への影響が少ないのです。また重粒子療法はがん細胞を殺傷する力も強く、一回の照射でも効果が高いために治療期間が短期間ですむというメリットもあります。

7 診療費用

以下のようになっています。

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
CT検査 5000円前後

池袋消化器内科・泌尿器科クリニックは消化器内科と泌尿器科の専門クリニックです。
当院ではプライバシー対策と感染対策を徹底して診療しております。
消化器や泌尿器の病気のことでお悩みの方は当院医師までお尋ね下さい。
池袋駅前でお待ちしております。

執筆 泌尿器科専門医 伊勢呂哲也

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