過活動膀胱(おしっこの回数が多い、尿意を我慢出来ない)
40歳以上の約14%が、「過活動膀胱」になっていると言われています。過活動膀胱は頻尿や「尿意が我慢できない」といった症状を伴います。多くの人が悩まされている過活動膀胱ですが、泌尿器に関わることなので「他人には相談しにくい」という人も多くいるようです。そのような方のためにも、詳しく解説していきます。また、過活動膀胱と同様の症状の中には膀胱がんなどの怖い病気が隠れている場合もありますので、気になる症状のある方は一度泌尿器科を受診することをおすすめします。
♦︎目次♦︎
1 過活動膀胱とは
2 過活動膀胱の症状
2.1 頻尿(尿の回数が多い)
2.2 尿意切迫感(尿意が我慢できない)
2.3 切迫性尿失禁(トイレの前に尿が漏れる)
3 過活動膀胱の原因
3.1 前立腺肥大症
3.2 高齢・加齢
3.3 その他の原因による尿意切迫感
4 過活動膀胱の検査
4.1 尿検査
4.2 採血検査
4.3 超音波検査
4.4 CT検査
4.5 膀胱鏡検査
5 過活動膀胱の治療
5.1 薬物療法
5.2 ボトックス膀胱内注入療法(ボツリヌス毒素注入)
6 診察費用
1 過活動膀胱とは
膀胱が過敏になって、尿意切迫感(尿意が我慢出来ない)を伴う頻尿のことを言います。男女ともに若い年代から高齢の方にまで起こりますが、特に男性は40歳後半からの前立腺肥大症が原因であることが多く、女性は加齢によるものがほとんどです。
2 過活動膀胱の症状
2.1 頻尿(尿の回数が多い)
過活動膀胱は、膀胱が尿を十分に貯めることができず、少しの量でもすぐに膀胱が「尿を出したい」という状態になり収縮してしまうため、何度もトイレに行きたくなります。頻尿は、トイレに行く回数が昼間に8回以上、夜間就寝中に1回以上というのが目安になります。
2.2 尿意切迫感(尿意が我慢できない)
尿意切迫感とは、「突然おしっこに行きたくてたまらなくなって、我慢できずにトイレに駆け込む」といった状態です。「尿意切迫感を伴う頻尿」が過活動膀胱の定義となっており、尿意切迫感は必ず伴う症状です。
2.3 切迫性尿失禁(トイレの前に尿が漏れる)
切迫性尿失禁とは、尿意切迫感からトイレに行くのですが、トイレにたどりつく前に、尿意がまさって漏れてしまう状態です。初期の過活動膀胱では、尿意切迫感があっても失禁までは起こさない人もいます。しかし、過活動膀胱が進行すると、切迫性尿失禁を伴うようになります。
3 過活動膀胱の原因
3.1 前立腺肥大症
男性の過活動膀胱の原因は、ほとんどが前立腺肥大症です。前立腺は40歳後半から徐々に大きくなってくるため、尿道を圧迫していきます。そのせいで尿の勢いが弱くなり、膀胱の神経が一生懸命おしっこを出そうと過敏になり、過活動になっていきます。まずは内服薬を飲むことが第一選択になりますが、効かない場合は経尿道的(尿道を介して行う手術)な内視鏡手術などを行います。
3.2 高齢・加齢
女性は、30代後半から徐々に過活動膀胱の症状が出始めます。加齢が原因で膀胱の神経が敏感になり、膀胱に少ししか尿が溜まっていないのにすぐにおトイレに行きたくなるのです。次第に強い尿意切迫感になり、尿失禁にも繋がっていきます。内服薬の服用や骨盤底筋体操などで様子をみていきます。
3.3 その他の原因による尿意切迫感
尿意切迫感や頻尿は、男性の前立腺肥大症や女性の加齢以外でも、尿管結石・膀胱炎・膀胱がん・前立腺がんなどが原因でおこります。こういった病気の場合には、過活動膀胱の治療に準じるのではなく、尿管結石なら結石の除去、膀胱炎であれば抗生剤の投与、膀胱がんや前立腺がんであればがん治療をする……と、原因となっている病気の治療をします。過活動膀胱の治療を始める前に、そのような病気が潜んでいるかどうかの確認が必要です。
4 過活動膀胱の検査
4.1 尿検査
尿の中に「赤血球・白血球がないか」「ばい菌がないか」「癌細胞がないか」などを確認できます。泌尿器科では最も重要な検査です。尿検査だけでたくさんの情報が得られます。
4.2 採血検査
前立腺がんの検査・PSA検査の他、「体の中に炎症がないか」「腎臓の機能に問題がないか」などを調べます。
4.3 超音波検査
「尿管結石がないか」「腎臓は腫れていないか」「膀胱に何か〝できもの〟がないか」などを調べます。
前立腺肥大症も、超音波検査で確認できます。痛みは伴わず、体に害のない優しい検査であり、情報量も多いという非常に有用な検査です。
4.4 CT検査
尿管結石などが疑われるときに行う検査です。ある程度の被曝はしますが、得られる情報量は非常に多いです。過活動膀胱の症状があったとしても、他の状況から尿管結石も考えられる場合はCT検査を行います。
4.5 膀胱鏡検査
膀胱鏡検査は膀胱がんや膀胱結石の否定にはとても大切な検査です。当院では軟性膀胱鏡を使用しており、身体に負担や痛みが少ない検査となっております。詳しくは当院医師までお尋ねください。
5 過活動膀胱の治療
5.1 薬物療法
過活動膀胱の症状で受診された場合でも、まずは他に大きな病気が合併していないか検査します。合併がないと判断したら、最初にお薬の内服治療を行います。男性で前立腺肥大症があれば、それに準じた内服治療を行ないます。女性の場合は、過活動膀胱の内服の治療を行います。主に「β3作動薬」、もしくは「抗コリン薬」を使います。
5.2 ボトックス膀胱内注入療法(ボツリヌス毒素注入)
薬物療法が効かない場合は「ボトックス(ボツリヌス毒素)を膀胱の中に注入させる」という治療を行います。筋肉の収縮を抑える「ボトックス」を膀胱の上皮20箇所に打ち込んで、膀胱の神経を若干麻痺させるというものです。膀胱の神経の過敏性をとることで、多くの過活動膀胱は治ります。このボトックス膀胱内注入療法(ボツリヌス毒素注入)は、2020年4月から保険適用された治療法で、3ヶ月に1回行うことができます。当院でもこの治療は行っておりますので、詳しくは医師にお問い合わせください。
6 診察費用
診察費用は以下の通りになっております。
尿検査のみ | 2000円前後 |
---|---|
エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
膀胱鏡 | 4000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担)
当院ではプライバシーの配慮を徹底しており、全ての患者様を番号でお呼びしております。
過活動膀胱の診断・治療も行ってます。診察により手術が必要と判断した場合は、適切な病院に紹介させていただきます。頻尿や尿意切迫感、尿が漏れるなどの症状が続き、過活動膀胱が疑われる方は、是非、一度、当院にご相談ください。
執筆 泌尿器科専門医 伊勢呂哲也