メニュー

下痢・便秘について

 

下痢や便秘は、誰しも1度は経験したことがある症状だと思います。腸の状態は、全身の健康に深く関連しており、下痢や便秘がなんらかの身体の不調のサインである場合も多くあります。この記事では、下痢や便秘の原因や考えられる疾患、また、腸が健康に及ぼす影響について詳しく解説していきます。参考にしていただければ幸いです。

漫画でわかる大腸カメラ検査
大腸内視鏡検査

♦︎目次♦︎

1 排便のメカニズム
2 下痢
 2.1 下痢とは
 2.2 下痢の種類と原因
 2.3 下痢が続く弊害
 2.4 下痢の治療
3 便秘
 3.1 便秘とは
 3.2 便秘の種類と原因
 3.3 便秘が続く弊害
 3.4 便秘の治療
4 便秘と下痢を繰り返す
5 推奨される検査
 5.1 血液検査
 5.2 便潜血検査
 5.3 超音波検査(エコー検査)
 5.4 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
 5.5  CT検査
6 診療費用

1 排便のメカニズム

人が摂取した食べ物が便となって排出されるまで1〜2日程度を要し、その間、下記に示す過程を経ます。

  1. 食べ物は咀嚼により唾液と混ぜ消化・吸収しやすくし、食道を通り、胃まで運ばれます。
  2. 胃の中では、運ばれてきた食べ物を胃酸によって消化・殺菌し、十二指腸へと運ばれます。
  3. 小腸では、胆汁、膵液、腸液によって最終段階 の消化が行われ、栄養素を吸収 します。
  4. 大腸では、水分の調節が行われ糞便が作られます。大腸は長さ1.5~2mほどの臓器で、小腸を取り囲むように位置する結腸と肛門から20cm程度の直腸に分かれます。大腸は、常に水分を吸収、排出し適正な水分量を調節しています。腸の蠕動運動によって便が結腸から直腸に運ばれると、大脳に指令が送られ、「排便反射」が起き便意が生じます。

2 下痢

2.1 下痢とは

大腸が行う水分調整のバランスが何らかの原因で崩れ、大腸内の水分が多くなると便に含まれる水分も多くなり軟便や形のない便となり、また、大腸の腸管運動が過敏となるため下痢症状が現れます。便に含まれる水分量が80〜90%になると、泥状便(でいじょうべん)と呼ばれる形のない泥のような便となり、水分量が90%以上になると、水様便となります。

2.2 下痢の種類と原因

下痢は急激に起きる急性下痢と3週間以上続く慢性下痢の2つのタイプがあり、急性下痢では外因性の原因による場合が多く、感染性の下痢や食べ過ぎ、アルコール・刺激物の取りすぎなどの暴飲暴食が原因です。一方の慢性下痢では内因性の原因による場合が多く、消化性疾患や全身性疾患など多岐に渡ります。

急性下痢
① 浸透圧性下痢

下剤やアルコールなど高浸透圧性物質によって、水分が腸管から吸収されなくなり、腸内の水分が過剰となり起こる下痢です。

② 分泌性下痢

感染性腸炎や非吸収性食物脂肪の摂取によって、ホルモンの働き、腸内に水分が分泌されてしまい起こる下痢です。

③ 薬剤性下痢

抗生物質によって腸内細菌のバランスが崩れ下痢が起きるなどのように薬の副作用として起きる下痢です。

慢性下痢
① 滲出性下痢

腸の炎症によって、腸管粘膜の透過性が亢進し、腸の細胞内の液体などが滲み出て起こる下痢です。

② 腸管運動異常による下痢

甲状腺機能亢進症や過敏性腸症候群、糖尿病性神経障害などの疾患によって腸管の運動異常によって起きる下痢です。

急性の下痢 慢性の下痢

感染性下痢症

・ウイルス性
 ロタウイルス、アデノウィルス、ノロウイルス など

・細菌性
 病原性大腸菌、サルモネラ、キャンピロバクタ― など

非感染性下痢

 暴飲暴食、アレルギー、薬剤の副作用、心理的な要因 など

炎症性疾患

・潰瘍性大腸炎
・Crohn病
・顕微鏡性大腸炎

機能性疾患

・過敏性腸症候群(IBS)

内分泌疾患

・甲状腺機能亢進症
・糖尿病

その他

・大腸がん
・悪性リンパ腫、膵がんなどの悪性疾患
・強皮症、全身エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチなどの膠原病
・胃や胆嚢の手術後

2.3 下痢が続く弊害

下痢を放置すると脱水や栄養障害が起き、健康を害する恐れがあります。また、図に示すような消化性疾患が原因の場合、症状が進行し、命を脅かす状態になるケースもあるため、速やかに医療機関を受診することをお勧めします

2.4 下痢の治療

感染性の下痢の場合は、整腸剤や抗生物質による治療を行います。慢性下痢の場合には検査を行い原因を明らかにし、適切な治療を行います。詳しい治療法については各疾患の記事をご参照ください。

3 便秘

3.1 便秘とは

排便の習慣は個人差もあり、便秘を明確に定義することは難しいと言われますが、「慢性便秘症診療ガイドライン2017」によると「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」を便秘としています。一般的な便秘は、腸の水分低下と蠕動運動が鈍くなることで起こります。また、なんらかの消化性疾患や全身性疾患が原因となり起こる便秘もあります。

3.2 便秘の種類と原因

便秘は機能性便秘と器質性便秘に分けられ、それぞれの特徴は下記の通りです。

 機能性便秘

食生活や生活習慣の乱れが原因となり、自律神経のバランスが崩れると大腸の機能不全が起き、便秘となります。便秘に悩む方の多くは、機能性便秘に当てはまります。

① 弛緩性便秘

食物繊維や水分の不足や運動不足、運動不足や加齢による腹筋力の低下が原因で大腸の運動機能が低下し、蠕動運動が十分に行われず起きる便秘です。

② 痙攣性便秘

ストレスなどが原因となり、自律神経の乱れによって大腸が緊張した状態が続き、腸の蠕動運動が強くなり過ぎて腸が痙攣を起こし、便がスムーズに運ばれなくなり起きる便秘です。

③ 直腸性便秘

便意を我慢したり、下剤や浣腸などを頻繁に使用することで排便のリズムが崩れ、さらに腸の運動低下を起こし、便が直腸に到達しても便意を催さず、直腸内に留まってしまうために起こる便秘です。

器質性便秘

消化性疾患や肛門などに何らかの疾患が原因となり起こる便秘です。特に大腸がんなどの重篤な疾患が原因となる場合には、下剤の使用が望ましくないことが多く、早めの検査が重要となります。

便秘の原因

機能性便秘 器質性便秘 器質性便秘 薬剤性便秘

弛緩性便秘
大腸の蠕動運動が低下、便が停滞

痙攣性便秘
腸管が痙攣、排便に支障

直腸性便秘
排便反射が低下、直腸に便が停滞

大腸がん、癒着、肛門疾患などによる腸管内容物の通過障害 甲状腺機能低下などの代謝性疾患、膠原病などの疾患の症状の一部として起こる二次的な便秘

抗うつ剤、鎮咳薬などの薬剤による便秘

3.3 便秘が続く弊害

便は食べ物から栄養を吸収した後に残ったものは体にとって不要なものであり、なるべく早く体外に排出することが望ましいといえます。便秘が続くと便に含まれる有害物質が血液中に漏れ出し、血液に乗って全身を巡り、様々な体調不良を起こします。便秘が続くとニキビや肌荒れが起きるという人がいますが、これも血液によって運ばれた便の有害物質が、汗や皮脂と一緒に毛穴から外へ排出されることが原因です。また、便秘によって腸内細菌のバランスが崩れると、脂質や糖の分解や吸収にも大きく影響し、肥満傾向になりやすく、高血圧糖尿病などの生活習慣病も発症しやすくなります。

3.4 便秘の治療

排便習慣には個人差があるため、機能性便秘であれば、ご本人に不快感や便秘に伴う他の症状があり、QOL(生活の質)の低下がある場合、治療を検討します。まずは、生活習慣や食生活を改善し、必要に応じて下剤を使用します。下剤は様々なタイプがあり、症状に応じて適正なら下剤を使用します。
器質性便秘の治療は、検査を行い原因疾患を明らかにし、適切な治療法を行うことが重要です。

種類 特徴 薬品名(製品名)
大腸刺激性下痢 植物性製剤 蠕動(ぜんどう)運動を促します。
長期連用により、耐性が生じやすい特徴があります。
センナ
・アローゼン®
センノシド
・プルゼニド®
・センノサイド®
大腸刺激性製剤 ピコスルファートナトリウム
・ラキソベロン®
・シンラシック®
直腸刺激性下剤 腸内で炭酸ガスを発生し、蠕動運動を促進し排便を促します。 炭酸水素ナトリウム
・無水リン酸二水素ナトリウム
・シンレジカルボン®坐薬
塩類下剤 腸管内の水分の吸収を増やし、便を柔らかくし、その刺激により排便を促します。 酸化マグネシウム
・マグミット®
上皮機能変容下剤 細胞区のイオンチャンネルに作用し、水分が分泌され便が柔らかくなります。 ルビプロストン
・アミティーザ
リナクロチド
・リンゼス
浣腸剤 直腸を直接刺激し、腸の蠕動運動を強めて排便を促します。 グリセリン
・グリセリン®浣腸
・ケンエーG®浣腸
浸透圧性下剤 腸管内の水分の吸収を増やし、便を柔らかくして排便を促します。 マクモゴール
・モビコール配合内用薬

詳しくは各疾患の記事をご参照ください。

4 便秘と下痢を繰り返す

便秘と下痢を繰り返すという症状は、大腸がんの特徴的な症状の一つです。大腸がんによる便秘は、腫瘍によって大腸が狭くなるため排便がスムーズに行えなくなるために生じます。一方の下痢は、大腸が狭くなるため便を排出しきれず、残便感が生じ、 少しずつ数回に分けて便意が起きることがあるため、下痢のような症状となります。 また、大腸がんの場合には、血便、貧血、腹痛、吐き気など他の症状を伴うこともあります。 便秘と下痢を繰り返す症状は、過敏性腸症候群、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎の場合にも起きることがあります。

5 推奨される検査

便秘の原因が何らかの消化性疾患であることが疑われる場合には、検査によってその原因を明らかにする必要があります。特に大腸がんの可能性を否定することは重要であり、必要に応じて下記の検査を行います。

5.1 血液検査

血液検査では、感染や炎症の有無を調べます。

5.2 便潜血検査

便潜血検査は、大腸がん検診のスクリーニング検査として一般的な検査です。

5.3 超音波検査(エコー検査)

エコーは身体に害の無い非常に有用な検査です。エコーでは、大きな大腸ポリープや大きな大腸がん、腸閉塞などが分かります。

5.4 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

便潜血検査で大腸がんを見逃す可能性もあり、大腸がんリスクの高い方は、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。当院では眠ったままの大腸カメラ検査も可能です。詳しくは当院医師までご相談ください。

漫画でわかる大腸カメラ検査
大腸内視鏡検査

5.5 CT検査

CTでは、腸内の便の溜まり具合やガスの状況が詳細にわかります。閉塞の有無も診断できます。
当院でもCT検査は可能です。詳しくは当院医師までお尋ねください。

6 診療費用

当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
胃カメラ 3500円前後
CT検査 5000円前後

当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーにに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
下痢が続く、頑固な便秘に悩んでいる、便秘や下痢を繰り返す、という方は、池袋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。

この記事を執筆した人
久田裕也

名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。

池袋院

大宮院

新橋院

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME