膀胱炎について
膀胱炎は比較的身近な病気ですが一度なった方はもう2度となりたくないと思うようです。膀胱炎は、男性よりも女性のほうが罹りやすい傾向にあります。その理由は、女性は男性に比べて尿道が短く3~4㎝の長さしかないため、細菌が膀胱内に侵入しやすい構造にあるからです。しかし、一言に膀胱炎と言っても様々な種類の膀胱炎があり、男性が罹る膀胱炎もあります。
この記事では、膀胱炎について専門的な言葉をなるべく使わず詳しく解説していきますので、ご参考にしてください。
♦︎目次♦︎
1 膀胱炎とは
2 膀胱炎の種類
3 急性膀胱炎
3.1 急性膀胱炎とは
3.2 急性膀胱炎の治療
4 再発性膀胱炎
4.1 再発性膀胱炎とは
4.2 再発性膀胱炎の治療
5 間質性膀胱炎
5.1 間質性膀胱炎とは
5.2 間質性膀胱炎の治療
6 複雑性膀胱炎
6.1 複雑性膀胱炎とは
6.2 複雑性膀胱炎の治療
7 放射線性膀胱炎
7.1 放射線性膀胱炎とは
7.2 放射線性膀胱炎の治療
8 膀胱炎の検査
8.1 尿検査
8.2 採血検査
8.3 超音波検査
8.4 膀胱鏡
8.5 CT検査
9 診療費用
1 膀胱炎とは
膀胱炎とは、膀胱の中で起きる炎症を指します。(炎症とは人間の白血球が細菌や何らかの物質に反応して起こる火事のようなものです)体外から尿道を通じて膀胱の中に入った細菌が感染を起こし、膀胱の入り口で繁殖して炎症を起こすというものです。膀胱炎は排尿痛や頻尿や残尿感といった症状を引き起こします。
2 膀胱炎の種類
膀胱炎には様々な種類があり、それぞれの原因や治療法が異なります。検査についても合わせて解説いたします。
3 急性膀胱炎
3.1 急性膀胱炎とは
急性膀胱炎は、若い女性に多い疾病です。男性は尿道が長く、細菌は膀胱に入る前に尿と一緒に排出されてしまうため、ほとんど急性膀胱炎は起こりません。
その原因は様々ですが、水分不足で排尿回数が少ないと細菌の濃度が高まったり、尿を我慢することで細菌の繁殖が進み、感染しやすくなったりします。また、陰部を不潔にしていると細菌が入りやすくなり、性行為の後などは膀胱炎が起こりやすい状態になります。
膀胱炎の特徴的な症状には、排尿痛・頻尿(尿の回数が多い)・残尿感(尿が残っている感じ)などがあります。尿の濁りや血尿が見られる場合もあります。
3.2 急性膀胱炎の治療
抗生剤を3〜5日服用し、よく水分を摂取し、休養をとること。頻繁に繰り返す場合には、漢方薬を投与することもあります。
4 再発性膀胱炎
4.1 再発性膀胱炎とは
急性膀胱炎を何度も繰り返すことを再発性膀胱炎と言います。膀胱炎を繰り返す人は多く、1年間に5~6回罹ってしまう人もいます。
しかし、特に原因がなく再発を繰り返している場合には、膀胱鏡や超音波で結石や腫瘍がないかを確かめることをお勧めします。結石や腫瘍があると付随して膀胱炎が起きる場合があるため、放置せずに泌尿器科を受診してください。
4.2 再発性膀胱炎の治療
抗生剤を3~5日服用し、再発しにくい体作りのために改善後もしばらくの間、漢方薬を服用していただくこともあります。
再発の度に抗生剤を服用することが基本ではありますが、近年、抗生剤が効かない耐性菌が問題となっています。抗生剤を繰り返し服用することは耐性菌を作るリスクも高く、体に良くありません。そのため、再発しないように、十分な水分摂取・陰部を清潔に保つこと・尿意を覚えたらすぐにトイレに行くことなどを心がけると良いでしょう。
5 間質性膀胱炎
5.1 間質性膀胱炎とは
間質性膀胱炎とは、細菌感染が原因の膀胱炎とは異なり、原因不明で膀胱の中に慢性炎症が起こる病気です。膀胱粘膜の機能障害や、自身の免疫が自分の細胞に反応し炎症を起こすことが原因と考えられています。間質性膀胱炎の症状には、排尿時の痛み・頻尿・残尿感・膀胱の痛み・下腹部痛などがあります。特徴的なのは膀胱鏡での所見で、ハンナ病変や天井出血が見られることです。ハンナ病変とは、特徴的な膀胱上皮のびらんのことで、この間質性膀胱炎(ハンナ型)は難病指定となっています。近年罹患率(罹っている人の割合)が高い傾向にあり、注目されている病気の一つです。
5.2 間質性膀胱炎の治療
間質性膀胱炎の治療は、膀胱水圧拡張術を行います。この治療法は、麻酔下で膀胱の中に水を注入しながら膀胱を拡張するというものです。また最近は、膀胱内に薬を注入する治療もあります。さらに、痛みに応じて、鎮痛薬・神経の興奮を抑える薬・抗うつ薬・抗アレルギー薬・ステロイドなどの内服も行います。間質性膀胱炎では、ストレスや食習慣が症状を悪化させる原因となる可能性があるため、刺激物を避けるなど、生活習慣や食事を見直すことも必要です。
6 複雑性膀胱炎
6.1 複雑性膀胱炎とは
複雑性膀胱炎とは、基礎疾患が原因となり膀胱炎になることです。一般に膀胱炎は女性に多い病気ですが、複雑性膀胱炎は、男性にも多くみられます。原因となる基礎疾患には、前立腺肥大症・膀胱結石・尿路結石・膀胱がん・糖尿病などがあります。
膀胱に腫瘍や結石があったり、尿管結石があったりすることで、そこに細菌がつきやすくなって膀胱炎を起こすものです。症状は急性膀胱炎と同じで、排尿痛・頻尿・残尿感が現れます。
6.2 複雑性膀胱炎の治療
複雑性膀胱炎の治療は、抗生剤を投与し、症状が落ち着いた状態で原因となる基礎疾患をを治療することが必要です。細菌がある状態で基礎疾患の治療をすると、全身に細菌が回ってしまう場合があるため、細菌による感染を落ち着かせてから治療することが大切です。
7 放射線性膀胱炎
7.1 放射線性膀胱炎とは
放射線性膀胱炎とは、婦人科疾患や泌尿器科疾患の放射線治療の後に起きる膀胱炎です。直腸・前立腺・膀胱に癌や出血があった場合、放射線治療によって癌の増殖や出血を抑えるという治療を行います。しかし、その際に隣接する膀胱にも放射線が当たってしまい、放射線で膀胱が傷つけられ、炎症を起こしてしまうことがあります。だからと言って、放射線治療後すぐに放射線性膀胱炎が起きるわけではなく、症状が現れるのは放射線照射後6ヶ月以上経過してからです。放射線性膀胱炎の症状には、出血・頻尿・残尿感・排尿痛などがあります。診断は、膀胱鏡による検査で行います。
7.2 放射線性膀胱炎の治療
放射線性膀胱炎に対しては、ステロイド剤を内服することで炎症を抑えるという治療になります。また、最近では高圧酸素療法を行う医療機関も増えています。これは、膀胱の組織へ多くの酸素を供給し、血管を修復して症状の改善をはかるものです。
8 膀胱炎の検査
8.1 尿検査
尿の中に血液が出ていないか、白血球・細菌・癌細胞がないかを調べます。尿検査は泌尿器科の中で非常に重要な検査になります。
8.2 採血検査
大きな炎症や腫瘍の有無を確認するため、炎症反応や腫瘍マーカーを調べます。また、腎臓の機能障害がないかも調べます。
8.3 超音波検査
超音波検査によって頻尿や残尿感の原因となる腫瘍や結石が膀胱内にないかを調べます。超音波検査は体に害がなく、非常に有用な検査です。
8.4 膀胱鏡
膀胱の粘膜表面に炎症や異常がないかを調べます。放射線性膀胱炎や膀胱腫瘍が疑われる場合には、膀胱鏡が必要となります。膀胱鏡は少し痛みを伴う検査ですが、膀胱内の病気に対して分かることが多く、泌尿器科では必須の検査になります。
8.5 CT検査
結石が膀胱炎の原因になることもあるため、CT検査によって結石の所在を詳しく見ます。CT検査は放射線被曝が多少ありますが、得られる情報が非常に多いとても有用な検査です。当院でも行っております。
9 診療費用
当院はすべて保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
膀胱鏡 | 4000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーにに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
排尿痛や頻尿を感じるという方は、池袋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。
執筆 泌尿器科専門医 伊勢呂哲也