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膀胱がんについて

アナウンサーや元プロボクサーなど芸能人や著名人が膀胱がんを公表したことで、近年、その認知度は上がり、患者さんの中にも膀胱がんの検査を希望する方が増えています。そういった芸能人、著名人の中にも早期発見早期治療そうきはっけんそうきちりょうが大切」と述べている方がいるようにどの段階で膀胱がんが発見されるかによって治療や予後が大きく異なります。

膀胱がん泌尿器科の中では非常に怖い病気の一つであり、近年増加の傾向にあります。この記事では膀胱がんについて分かりやすい言葉で解説していきますので、参考にしていただければ幸いです。

◆目次◆

1 膀胱がんとは
 1.1 早期の膀胱がん
 1.2 進行した膀胱がん
2 膀胱がんの症状
 2.1 肉眼的血尿(尿に血液が混じる)
 2.2 頻尿(尿の回数が増える)
 2.3 残尿感(排尿後に残っている感じがする)
 2.4 発熱
 2.5 下腹部痛・背部痛
3 膀胱がんの検査
 3.1 尿検査
 3.2 採血検査
 3.3 超音波検査
 3.4 CT検査
 3.5 膀胱鏡検査
4 膀胱がんの治療
 4.1 手術治療
  4.1.1 経尿道的膀胱腫瘍切除術けいにょうどうてきぼうこうしゅようせつじょじゅつ
  4.1.2 開腹手術
  4.1.3 腹腔鏡手術、ロボット手術
  4.1.4 放射線治療
  4.1.5 化学療法
5 診療費用

1 膀胱がんとは

1.1 早期の膀胱がん

膀胱癌は粘膜表面に発生します。図にある通り早期の膀胱がんは膀胱の表面までしか達していないものをいいます。早期の膀胱がんは、尿道を通して行う経尿道的内視鏡治療けいにょうどうてきないしきょうちりょうにより癌細胞を切除することができ、予後も良好です。しかし、膀胱がんは内視鏡で切除した後も再発することが多く、再度内視鏡的治療ないしきょうてきちりょうをする確率が高いです。3〜4人に1人は再発するとの統計もあり、定期的な検診を行うことが大切です。

1.2 進行した膀胱がん

図にある通り、膀胱の表面から発生した腫瘍が深く広がり、膀胱の筋肉層まで達し浸潤(癌細胞が周囲の組織に滲みこむようにひろがること)した状態を進行した膀胱がんといいます。進行した膀胱がんでは、根が深く内視鏡手術では、全ての癌を切除することは不可能となり、手術で膀胱全摘ぼうこうぜんてき(膀胱全てを取り出す)をします。膀胱全摘後は、新たな方法で尿を体外へ出す必要があり、尿路変向(変更)と呼ばれる再建手術を行い、膀胱を腸で代用する方法や直接尿をお腹から外に出す方法があります。

前述したように早期膀胱がんであれば膀胱を摘出する必要もなく、体への負担も少ない治療法で治すことが可能ですので気になる症状がある場合は、できるだけ早いうちに泌尿器科を受診するようにしましょう。

1.3 膀胱がんになりやすい人とは

統計によると日本における男性の癌罹患率(癌にかかる人の割合)では、膀胱がんは10番目に多い癌と言われています。また、男性の罹患率(かかる人の割合)が、女性より4倍程度多い癌ですが、その理由は明らかではありません。しかし、喫煙が膀胱癌を引き起こす大きなリスクとなることは明らかとなっており、男性膀胱がんの 50%、 女性膀胱がんの 30%に喫煙が関与し、喫煙者は非喫煙者に比べ、約4倍膀胱がんの発症リスクが高いという報告もあります。また、特定の化学物質(ナフチルアミンやベンジジンアミンなど)を扱う職業の方々に罹患する人が多いと言われています。

2 膀胱がんの症状

2.1 肉眼的血尿にくがんてきけつにょう(尿に血液が混じる)

膀胱がんの初期症状として自覚症状のない無症候性肉眼的血尿むしょうこうせいにくがんてきけつにょうが挙げられます。血尿に気づいた段階で直ちに泌尿器科を受診すれば早期の場合がほとんどです。しかし、血尿があっても痛みや発熱などの自覚症状がないため、放置してしまうと膀胱がんは進行し、取り返しのつかないことになってしまいますので無症候性肉眼的血尿(目に見える血尿だけで、他に症状が無いこと)に気付いた時は、必ず泌尿器科を受診し、適切な検査・治療を受けることが大切です。

2.2 頻尿(尿の回数が増える)

今までより尿の回数が増える『頻尿』の症状が現れた場合には要注意です。膀胱がんがあることで頻尿、排尿時の痛み、残尿感などの膀胱刺激症状が現れます。膀胱刺激症状ぼうこうしげきしょうじょうは、膀胱がんが深い筋層まで到達している場合に起きる特徴的症状の一つです。

2.3 残尿感(排尿後に残っている感じがする)

前立腺肥大のイメージ

残尿感も前述した膀胱刺激症状の一つです。残尿感や頻尿は年齢によっては前立腺肥大症などの泌尿器疾患で起きることがありますが、膀胱がんの可能性も否定できませんので残尿感が続く場合は、必ず泌尿器科を受診しましょう。

2.4 発熱

最初に血尿や頻尿、残尿感が現れたあと、膀胱がんがさらに進行し癌細胞の量が増えると発熱することもあります。膀胱がんの進行に伴う発熱の場合、なかなか解熱せず、24時間ずっと熱が高い状態になることもあります。

2.5 下腹部痛・背部痛

進行した膀胱がんになると、癌細胞が膀胱を浸潤し、癌細胞が膀胱の壁の外まで広がり腹膜を刺激すると下腹部の痛みを生じます。また、癌細胞の浸潤により尿管口(尿管と膀胱のつなぎ目)を閉塞するようになると背中の痛みを感じることもあります。

3 膀胱がんの検査

3.1 尿検査

膀胱がんが疑われる場合に尿検査が必須です。血尿の有無と白血球、赤血球の数を検査し、さらに尿の中の細胞を調べ、癌細胞がないかを調べます。膀胱がんの場合は赤血球と癌細胞がでてくる可能性があります。膀胱がん特有に現れる2種類の腫瘍マーカー(NMP22、BTA)についても調べます。しかし、腫瘍マーカーの検査は、感度が低い傾向にあり診断の補助として使用します。

3.2 採血検査

炎症所見であるC反応性蛋白(CRP)が高くないか、血清クレアチニン値などを見て腎臓の機能が阻害されていないかを確認します。また、前立腺がん、と除外するために前立腺がんの腫瘍マーカーとなるPSA値も調べます。

3.3 超音波検査

膀胱がんの超音波検査では、一般に約1cm以上の腫瘍であれば発見することができます。超音波検査にあたり、膀胱に尿が溜まった状態で行う必要があります。超音波検査は放射線も使用せず、簡単かつ痛みもなく安全な検査ですが、膀胱に尿が溜まっていないとできない検査ですので検査を受ける前はトイレは控える必要があります。

なお、人間ドックや職場検診では基本的に膀胱の超音波検査は行いません。膀胱の超音波検査を希望の場合は泌尿器科での検査が必要となります。

3.4 CT検査

膀胱がんのCT検査は膀胱がんが膀胱の壁にどれくらい浸潤しているのかを見ることで進行度が分かります。また、膀胱がんがリンパ節や肺などに転移していないかを判断するために必要です。CT検査は放射線を浴びるので体に僅かな害がありますが、CT検査でわかる情報量は非常に多く、適切な治療のためには必要な検査です。

3.5 膀胱鏡検査

膀胱がんを疑った場合には膀胱鏡検査を行います。尿道から直接カメラを挿入して膀胱内を観察します。
池袋消化器内科・泌尿器科クリニックでは軟性膀胱鏡を使用しているため、身体への負担や痛みは軽減されます。
血尿などの症状がある方には膀胱鏡検査は必要不可欠となります。
詳しくは当院医師までお尋ねください。

4 膀胱がんの治療

4.1 手術治療

4.1.1 経尿道的膀胱腫瘍切除術けいにょうどうてきぼうこうしゅようせつじょじゅつ

経尿道的膀胱腫瘍切除術のイメージ図

経尿道的膀胱腫瘍切除術は、早期の膀胱がんに行う手術です。尿道を通して膀胱内にカメラを入れて膀胱の腫瘍を電気メスで切除します。筋肉層まで進行し膀胱癌が周囲の組織に浸潤していると、目に見える部分の腫瘍を電気メスで切除しても癌細胞が残ってしまいます。そのため、筋肉まで浸潤していない早期の膀胱癌は、この経尿道的膀胱腫瘍切除術により電気メスで切除することが可能です。ただ、先述した通り、膀胱癌は再発しやすいので早期の膀胱癌を経尿道的膀胱腫瘍切除術で切除した後も3ヶ月に1回の膀胱鏡検査が必要になります。

4.1.2 開腹手術

最近では、膀胱癌の治療での開腹手術は、少なくなってきていますが、開腹手術を行う場合、下腹部を10cm以上切開して膀胱を全摘出します。膀胱を全摘出した後に新たな方法で尿を体外へ出す必要があり、尿路変更術(尿の通り道を変えること)と呼ばれる再建手術を行います。尿路変更術には、膀胱の代わりに尿管を腹部に繋ぎ腹部に尿の出口(ストーマ)を作り、そこに装具を常時装着し尿をお腹から外に出すか、腸を利用し代用膀胱を作り尿道につなげて自然に排泄を促す方法があります。

開腹手術は泌尿器科の中ではかなり大変な手術なので5〜6時間ほどかかり出血も多いため、手術に備え事前に自分の血液を採取し輸血に備える場合もあります。

4.1.3 ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術しえんふくくうきょうかこんちてきぼうこうぜんてきじょじゅつ

ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術は、2018年4月から保険診療として認可されました。ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術では、開腹手術と同じことを行うのですが、細かい作業がより簡単にできるようになり、出血量も少なく済むというメリットがあります。そのため、合併症も少なく、より安全に行えますが、術後に勃起不全が起きることがあります。

(ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術は、進行した膀胱がんに有益な手術ですが、保険適応でも治療費は高額となります。高額医療の適応など事前に確認することをお勧めします。

4.1.4 放射線治療

進行した膀胱がんに対しては基本的には手術治療が必要ですが、放射線治療を行う場合もあります。特に体力が低下した高齢者では、手術自体がリスクとなる場合もあり、QOLの維持を考え、放射線治療を選択し膀胱を温存する(残す)こともあります。

また、膀胱癌からの出血による血尿を止めるためにも放射線治療を行うことがあります。

4.1.5 化学療法

化学療法(血管から点滴でお薬を体内に入れる治療)は、抗癌剤により膀胱の腫瘍を小さくすることを目的とした治療です。進行した膀胱がんの手術の前後に行われることが多く、化学療法単体ではなく手術の補助として行われます。副作用としては、吐き気や食欲低下、下痢、抜け毛、発熱、白血球の減少などがありますが、個人差が大きくあります。

以上、解説したように血尿や膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛、残尿感など)が膀胱がんのサインといえる症状ではありますが、その症状が常に続くことなく、時として無症状になることもあります。『血尿や残尿感の気になる症状はあるけど、時々だから...』と受診を先伸ばしにしたことで膀胱がんが進行してしまったというケースもありますので、少しでも気になる症状があれば、速やかに泌尿器科を受診することをお勧めいたします。

5 診療費用

当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
膀胱鏡 4000円前後
CT検査 5000円前後

膀胱癌は早期発見が早い回復の鍵となります。小さな症状でも膀胱癌の不安を感じる方は是非一度、当クリニックにお気軽にご相談ください。池袋駅前の「池袋消化器内科・泌尿器科クリニック」でお待ちしております。当クリニックでは、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーに配慮した診療を行ない、泌尿器科・消化器科専門のクリニックとして経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。

執筆 泌尿器科専門医 伊勢呂哲也

池袋院

大宮院

上野院

新橋院

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