PSA(前立腺特異抗原)について
PSAと聞くと前立腺の癌に関わる数値だなと、なんとなくみなさんご存知だと思います。前立腺がんはアメリカではすでに男性の罹患率1位となっており、2025年には日本国内でも男性の罹患率(かかっている人の割合)1位になる癌と言われています。
今回は前立腺がんと密接に関係しているPSA(前立腺特異抗原)について説明していきたいと思います。
◆目次◆
1 そもそもPSA (前立腺特異抗原)とは
2 PSA (前立腺特異抗原)が高いと考えられる病気
2.1 前立腺がん
2.2 前立腺肥大
2.3 前立腺炎
3 PSA (前立腺特異抗原)はどこで調べるの?
3.1 人間ドックや企業検診
3.2 区や市の健診
3.3 泌尿器科を受診して
4 PSA (前立腺特異抗原)が高いと指摘されたら
5 診療費用について
1 そもそもPSA (前立腺特異抗原)とは
PSAは前立腺特異抗原といって、前立腺の中にある特殊な酵素(タンパク質)です。この酵素(タンパク質)はがんが出す物質ということではなく、全ての男性の前立腺の中にある物質です。この前立腺の中にある酵素が血液中にある程度漏れ出てくるということは誰でもあることなのですが、前立腺がんになるとがん細胞が正常な組織を食い破って増殖していくため、前立腺の組織が破壊されてPSAを含む前立腺の中の物質が血液中に漏れ出てきます。そうなるとPSAの血中濃度が高くなってくるので前立腺がんを疑うことになります。ですがPSAの数値が高くなる疾患(病気)は前立腺がん以外にもありますのでPSAが高いから必ずしも前立腺がんだとは言い切れません。
2 PSA (前立腺特異抗原)が高いと考えられる病気
2.1 前立腺がん
先述した通り前立腺のがんでもPSAの値は上がってきます。一般的に前立腺がんの進行度合いはPSAの値によって我々泌尿器科医は判断しています。PSAの正常数値は4ng/mL以下となっていますが、PSAが100ng/mL、200ng/mLとか、人によっては1000ng/mLという場合もあるのですがそうなってくると前立腺がんがかなり進行していると考えます。
逆にPSAが5ng/mL、6ng/mLであったとすれば前立腺がんがあったとしてもそんなに進行はしていないだろうと考えられます。
前立腺がんは基本的にはPSAの数値が高いときに疑って、その後超音波やMRIで検査をして前立腺の針生検をして前立腺がんの診断をつけます。なのでPSAが高いからと言って必ず前立腺がんというわけではありません。後述するように前立腺肥大や前立腺炎でもPSAの値は上昇します。
前立腺がんの治療は、PSA監視療法という特に積極的な治療は何もせず、3ヶ月に一度採血しPSAの値を監視していくだけの治療方法や、放射線治療、手術療法があります。最近では手術療法の中でもロボット手術が主流になってきています。また、前立腺がんの治療の特徴的なものとしてホルモン療法があります。ホルモンを使って男性ホルモンを抑えるとても効果の高い治療です。
先述した通り、前立腺がんは2025年には国内でも男性の罹患率(かかっている人の割合)1位になるがんではありますが、死亡率は低いため適切な治療としっかりとしたフォローをしていけばこれが原因で亡くなるということはほとんどございません。ただし、その中でも重篤な前立腺がんというものもありますので注意が必要なのです。一度でもPSAが高いと指摘された方は泌尿器科の受診をおすすめします。
2.2 前立腺肥大
前立腺肥大というのは50歳以上の男性に多く見られる病気です。前立腺肥大の症状としてはおしっこが出にくくなる、おしっこの勢いが弱くなる、尿の回数が多くなる、最終的にはおしっこが出なくなります。前立腺が肥大して大きくなってくると、それだけで前立腺の中にあるPSAの量も多くなってくるので自然と血液中のPSA濃度も高くなってきます。また前立腺が大きくなってくると血管も太くなってくるので出血しやすく、組織が血液の中に漏れ出やすくなります。そのため前立腺肥大症でもPSAの数値は上がってきます。
前立腺肥大ではPSAの値が高い場合に超音波やMRI検査を行って、前立腺がんがないかを確認します。前立腺がんがないと確認した後に必要であれば前立腺肥大の治療をします。前立腺肥大の基本的な治療方法は薬物治療(薬を飲む治療)になるのですが、薬物治療でも効かない場合には経尿道的内視鏡手術(尿道からカメラを入れて行う手術)を行います。昔は開腹手術もあったのですが、現在では前立腺肥大には内視鏡的な手術が主流となっています。
2. 3前立腺炎
は細菌が前立腺に感染することで炎症を起こして、前立腺の組織が壊れて先述した同様の理屈でPSAが血中に漏れ出てきます。前立腺炎の場合はPSAの値がとても高くなります。
10ng/mLくらいの人もいますが40〜50ng/mL、100ng/mLくらいまで上がる人もいます。PSAの数値はこのように高くなる傾向にあるのですが、前立腺炎の場合は必ず熱があったり、頻尿(おしっこの回数が多くなる)や残尿感(排尿後に残った感じがある)、排尿時痛などの症状を伴います。それらの症状があるために受診をして前立腺炎の確認のためにPSAの値を測るという流れになります。なので健診でPSAの値が高くて病院に行ったら前立腺炎だったということはほとんどございません。
前立腺炎の治療は抗生剤(細菌を殺す薬)の投与になります。内服で投与しますが、あまりにもひどい場合には入院をして点滴で投与することになります。おしっこが出ない方には尿道カテーテルを使っておしっこを出すこともあります。
3 PSA (前立腺特異抗原)はどこで調べるの?
3.1 人間ドックや企業検診
人間ドックは自主的に受けるものであり、企業健診は企業が受けさせてくれるものですが、どちらにせよ基本的にPSA検査はオプションであり義務付けられている絶対に受けなければならない検査ではありません。オプションとしてご自身で3千円〜4千円ほどかけて検査するということになります。人間ドックや企業健診を定期的に受けている人でも一生PSAを測ったことがないという人もいるのです。
ですが前立腺がんは非常に増加してきているがんでもあり、特に症状がなくてもお父様やご兄弟など血縁関係に前立腺がんの方がいるという場合は罹患率も高くなってきますので、必ず調べることをおすすめします。血縁関係に前立腺がんの方がいなくても50歳を超えたら一度調べた方が良いでしょう。
3.2 区や市の健診
区や市の検診でも前立腺のがんを調べることができます。これはもっと安くできます。埼玉県大宮市においてはプラス500円で調べることができます。東京都豊島区民健診では無料で行ってます。お住いの健診機関にお問い合わせしてみると良いと思います。健診ではそのPSAの値の評価・診断はしてもらえないので、疑問に思う点がある方はお近くの泌尿器科を受診しましょう。
3.3 泌尿器科を受診して
頻尿とか残尿感とか排尿時痛などの症状がある場合は、泌尿器科を受診することで保険を活用してPSAの検査をすることができます。何も症状がないときはPSAを測る理由もないのでできませんが、何かしらの症状がある時にはお医者さんにその旨を話しPSA検査は保険適用内で行うことができます。
4 PSA (前立腺特異抗原)が高いと指摘されたら
PSAが高いと指摘されたら基本的には泌尿器科を受診した方が良いでしょう。超音波検査や採血検査、尿検査をして、必要であればMRI検査までしてみましょう。PSA検査は一回だけ数値が高くなっても、偶発的に高くなることがあるので、もう一回測って下がっていれば前立腺がんの疑いは減ります。がんであれば基本的にPSAの値は高いままです。
一度高い数値が出た方はもう一度測り、下がっていれば安心できるかなと思いますし、そこでもし高い場合は前立腺のがんを疑うことにもなります。もちろん前立腺肥大があってもPSAの値は高いのでなんとも言えないのですが、そこは専門医の判断に委ねましょう。
5 診療費用について
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
膀胱鏡 | 4000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
当クリニックでは、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーに配慮した診療を行ない、泌尿器科消化器科専門のクリニックとして経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
PSAが高いと言われた場合は、是非一度、当クリニックにお気軽にご相談ください。池袋駅前の「池袋消化器内科・泌尿器科クリニック」でお待ちしております。
執筆 泌尿器科専門医 伊勢呂哲也