腰の痛み・背中の痛み(腰痛、背部痛について)
腰痛や背部痛は、誰もが一度は経験したことがあると思います。
全人口の60%以上の人が腰痛や背部痛の悩みを抱えているとの報告もあります。
しかし、医療機関を受診するタイミングが判断できず、痛みを放置している方も少なくありません。腰痛や背部痛には、見過ごせない疾患が隠れていることもあります。
この記事では腰痛・背部痛の詳細について解説して行きますので、ぜひご参考にしてください。
♦︎目次♦︎
1 腰痛・背部痛について
2 腰痛・背部痛の原因
2.1 尿管結石症
2.2 水腎症
2.3 前立腺がん
2.4 逆流性食道炎
2.5 膵炎
2.6 肺の病気
2.7 整形外科的な病気
3 腰痛・背部痛の検査
3.1 尿検査
3.2 採血検査
3.3 超音波検査
3.4 レントゲン検査
3.5 CT検査
4 もし腰痛・背部痛を感じたら
5 診療費用
1 腰痛・背部痛について
一般的な腰痛・背部痛は「筋肉の痛み・腱の痛み・骨の痛み」などと同様に整形外科分野の病気と考えることが基本ですが、怖い疾患が隠れていることも少なくありません。大動脈留などの血管の損傷からくる場合もあれば、泌尿器科疾患、消化器疾患、肺疾患などもあり、一概に腰痛や背部痛を整形外科な痛みと決めつけ、放置するべきではありません。
2 腰痛・背部痛の原因
2.1 尿管結石症
尿管結石の特徴的症状は、片方の腰が突然、痛くなります。「痛みの王様」と言われ、動いても安静にしていても痛みがあり、その人の性格を変えるぐらいの強い痛みが出ますが、その痛みは24時間以内に落ち着く傾向にあります。また、血尿や頻尿、残尿感などを伴うこともあります。保存治療により水分摂取を行い、自然排石を促しますが、保存的な方法で効果がない場合は内視鏡や体外衝撃波などを用いた治療も行います。詳しくはこちらをご覧ください。
2.2 水腎症
水腎症とは、なんらかの原因によって尿管が詰まってしまい尿の流れが堰き止められ、尿管や腎盂の中に尿が溜まって風船のように膨らんでしまう状態をいいます。
水腎症は、軽度で痛みのないものから腎臓が尿でパンパンに膨らんで腰の片側に痛みが出るものまで、症状の程度は様々です。激痛を伴う場合でも腎盂が膨らんだ状態に慣れてしまうため、痛みがそれほど長く続かない場合もあります。しかし、放置せず医療機関を受診することをお勧めします。水腎症の原因となるのは、尿管結石・尿管癌・膀胱がんなどがあり、原因となっている疾患を治療することが重要です。
2.3 前立腺がん
前立腺がんは2025年には日本の男性で一番罹患率(かかっている人の割合)が多くなる癌と予測されていますが、アメリカではすでに一位のがんです。前立腺がんが増えているのは、食の欧米化による増加傾向とともに、PSA検査の普及によってスクリーニングの精度が向上し、発見しやすくなったことも背景にあります。前立腺がんが進行すると骨転移をしやすく、その結果、腰の痛みが出ることがあります。頻尿などの他の症状や年齢なども判断材料に加え、腰の骨に痛みがあった場合は、前立腺がんを疑う場合もあります。前立腺がんの治療はホルモン療法やPSA監視療法やロボット手術、放射線治療がメインとなり、早期発見・早期治療が回復の鍵となります。
50代になったら、市町村で行う検診や人間ドックなどでもPSA検査をオプションで付けることをお勧めします。
2.4 逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸の増えすぎや胃の入口の筋肉の緩みなどによって起こります。主な症状は、胸やけ・げっぷ・胃酸の逆流、心窩部痛と呼ばれるみぞおちの痛みなどですが、胃腸の機能低下や血流の悪化などによって、食後に背部痛や肩痛が起こることがあります。逆流性食道炎の治療は、基本的には胃酸を抑える薬を服用し経過を見ます。食後の背部痛や鳩尾の痛みが続くと言う人は、胃カメラ検査を受けることをお勧めします。
2.5 膵炎
膵臓は胃の裏側に位置し、その炎症によって背部痛が起きるケースもあります。膵炎は、アルコールの過剰摂取が原因となり起きる疾患で、急性膵炎と慢性膵炎に分けられます。放置し膵炎が悪化すると命を脅かす危険性もありますので、飲酒の習慣があり、背部痛のあるという方は膵炎を疑い検査を行うことをお勧めします。診断には、超音波検査が必須となりますので、超音波検査ができる医療機関を受診してください。
2.6 肺の病気
肺の疾患でも背部痛が出ることがあります。中でも、肺に穴が開く気胸によることが多々あります。気胸の初期症状として、息苦しさ・胸の痛み・咳・肩や鎖骨周辺の違和感などと共に、背中の痛みが起きるのです。小さい穴の場合は、自然に塞がる場合もあり、治療はせずに経過を見ることもありますが、穴が大きくなると塞がらずに空気が漏れ続けることもあるため、穴を塞ぐ手術を行います。肺の病気に対しては、レントゲン検査やCT検査が非常に効果的です。当院でも行っております。詳しくは当院医師までお尋ねください。
2.7 整形外科的な病気
腰痛や背中痛で最も多い原因は、整形外科的な疾患です。加齢に伴い骨密度が減少し、骨粗しょう症と言われる状態になると骨に負担がかかり痛みが出ることがあります。さらに症状が進むと背中が曲がったり、変形による圧迫骨折や転倒による骨折などを起こしやすくなったりします。また、変形性腰椎症・椎間板ヘルニア・ぎっくり腰(腰椎捻挫)などの疾患によっても腰痛や背部痛が現れます。椎間板ヘルニアなど一部の疾患では、手術が必要なこともあります。
3 腰痛・背部痛の検査
今回の記事で解説したように、腰痛・背部痛には様々な原因があります。その原因を早期に突き止め、的確な治療を行うことが大切です。そのためには、必要な検査を受けることが先決です。
3.1 尿検査
泌尿器系の病気を疑った場合、尿検査は非常に重要な検査となります。尿中に白血球、赤血球が認められた場合、腰痛・背部痛が尿管結石や腎盂腎炎などの泌尿器科系の疾患によるものだと強く疑われます。さらに、腎盂腎炎の場合には、尿検査によって細菌の有無や種類を調べることができます。
また、尿中の癌細胞の有無を調べ、癌の可能性を確認する必要があります。
3.2 採血検査
採血検査にあたって、整形外科分野の疾患では顕著な炎症反応は認められませんが、消化器系や泌尿器科系や血管系の疾患であれば、何らかの異常が現れます。また、前立腺がんを疑う場合にはPSA検査を行い、膵炎を疑う場合にはアミラーゼなどの酵素の上昇がないかなどを検査します。
3.3 超音波検査
超音波検査は体に害がなく安全な検査でありながら、非常に多くのことが分かります。腎臓尿管・膵臓・前立腺などの疾患は、超音波検査によって把握することができます。
3.4 レントゲン検査
レントゲン検査は、短時間で撮影でき、被曝量が少なく安全な検査で多くの情報が得られます。泌尿器系疾患では、レントゲン検査が尿管結石の診断に非常に有効です。また、整形外科では基本であり、レントゲン検査で異常が見られた場合には、さらに詳しい情報を得るためCT検査などを行います。
3.5 CT検査
CT検査は、わずかな放射線被曝はあるものの、詳しい情報が得られる検査です。尿管結石の大きさや位置・水腎症の尿管や腎盂の様子・大動脈の太さ・前立腺がんの骨転移、膵臓や肺の詳しい状態などを、CT画像で診ることができます。
4 もし、腰痛・背部痛を感じたら
もし、腰痛・背部痛を感じたら、必ず上記に挙げた検査ができる最寄りの医療機関を受診してください。整形外科疾患と自己判断することは危険です。腰痛・背部痛は、身体が発する危険信号です。そのサインを見過ごさないことが、早期発見・早期治療に繋がります。
5 診療費用
当院はすべて保険診療です。
初診の診療費用は、薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
腰の痛みや背中の痛みを感じるという方は、池袋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。
名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。