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再生医療とは〜エクソソームや線維芽細胞治療〜

[2023.04.18]

みなさんはイモリやトカゲのしっぽが切れてもすぐに再生することはご存じでしょうか?
イモリやトカゲは敵から身を守るためにしっぽを置いて、その場から逃げます。切断されてむき出しになった筋肉部分には、徐々にふくらみが出てきます。
これを、再生芽といいます。この再生芽には幹細胞が関与していると考えられています。
この再生芽がのびてしっぽが再生するのです。
このトカゲのように私たちの組織や臓器、細胞も再生することができたら素晴らしいと思いませんか?

再生医療とは

再生医療とはけがや事故、病気で失った組織や細胞を再生させる医療です。イモリやトカゲのように私たちも手や足が自然に再生することができれば夢のようですが、現実は不可能です。ただ医療の分野では再生医療が少しずつですが確実に進歩しており、今までは治療の限界があった病気やケガが治せるようになってきているのです。

2012年に京都大学の山中伸弥先生がiPS細胞の作製に成功し、ノーベル賞を受賞したことは記憶に新しいと思います。日本はiPS細胞を利用した再生医療の分野では世界のトップを走り続けています。iPS細胞は人工多能性幹細胞という幹細胞です。ここでもやはり幹細胞という細胞が鍵となってきます。再生医療にもいろいろな種類がありますが、その中でもこの「幹細胞」を利用した再生医療が多くなっています。

幹細胞とは

幹細胞とは自己複性能と多分化能の2つの能力を持った細胞のことをいいます。分かりやすく言うと「自分とまったく同じ能力を持った細胞を作り出す能力を自己複製能」「血液系の細胞、神経系の細胞や皮膚の細胞など私たちのからだを作る様々な細胞に分化することができる能力を多分化能」といいます。幹細胞にもいくつかの種類がありますが代表例としてES細胞、iPS細胞、体性幹細胞があります

E S細胞

ES細胞は卵子と精子が受精し、受精卵となった細胞が分化した初期胚(胚盤胞)から一部 の細胞を取り出し、様々な細胞に分化する能力を持たせるようにした細胞です。受精卵に近い能力で、強い多分化能をもちます。

iPS細胞

iPS細胞は自分の皮膚などの体細胞を取り出し、そこに4つの特定の因子(山中因子)
を加えることでできる多分化能をもつ細胞です。

体性幹細胞

体性幹細胞は受精卵の状態から少し分化が進み、分化する方向がある程度決定した細胞です。体性幹細胞には間葉系幹細胞や脂肪幹細胞、造血幹細胞などいくつかの種類があります。
体性幹細胞の種類とそれが何に分化できるのかを下に示しています。

体性幹細胞の種類

間葉系幹細胞:骨細胞、腱細胞、骨芽細胞、筋肉細胞、心筋細胞、肝細胞など
脂肪幹細胞:グリア細胞、神経細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞など
造血幹細胞:赤血球、白血球、血小板など
神経幹細胞:グリア細胞、神経細胞など
血管内皮幹細胞:血管内皮細胞など
上皮幹細胞:皮膚、粘膜上皮など

体性幹細胞が多くの再生医療に用いられる理由

体性幹細胞はES細胞やiPS細胞ほどの万能さはありませんが、このようにいろいろな細胞に分化します。その中でも間葉系幹細胞は多くの細胞に分化することが分かっています。
これらES細胞、iPS細胞、体性幹細胞を比較した場合、ES細胞やiPS細胞は確かに分化能力は高いのですが、本来なら赤ちゃんになるはずの受精卵を使っていることから倫理的問題が生じる可能性があります。また、多くの細胞に分化する能力を持つがゆえに、細胞が癌化する恐れもあります。よって現在では体性幹細胞、その中でも間葉系幹細胞が多くの再生医療の現場で用いられています。

間葉系幹細胞

ホーミング効果とパラクイン作用

間葉系幹細胞にはとても面白い特徴があります。それは、いろいろな細胞に分化する能力はもちろんのこと、幹細胞自体が老化した組織や細胞を修復する作用があることです。自分の幹細胞を点滴すると幹細胞が血流に乗って体の中でダメージが起こっている組織や臓器にたどり着く習性があります。これをホーミング効果と言います。たどりついた幹細胞はそこで多くの成長因子、サイトカイン、エクソソームを大量に放出します。それらが近くの細胞に働きかけ、細胞の修復、抗炎症作用、抗酸化作用、免疫系の制御などを促します。これをパラクイン作用と言います。
これらの特徴を応用して日本ではすでに多くの医療機関で間葉系幹細胞治療が取り入れられています

間葉系幹細胞を用いた治療

どのような疾患に適応があるのかと言いますと、脊髄損傷の後遺症、脳梗塞の後遺症、変形性膝関節症、肘関節疾患などの治療に応用されてきた歴史があります。脊髄損傷とは事故やケガによって脊髄がダメージを受け、そこの神経細胞が死んでしまい、手足に麻痺や感覚障害が残ってしまうことを言います。そして、死んでしまった細胞は残念ながら元には戻りません。このような方に間葉系幹細胞点滴をすると幹細胞はホーミング効果によりダメージを受けた脊髄にたどり着きます。そしてパラクイン作用により死んでしまった神経細胞を修復したり、新しい幹細胞が死んでしまった細胞に置き換わり、神経細胞に分化して脊髄を再生します。その結果、今まで歩けなかった方が歩けるようになる可能性があります。脊髄損傷については病状にもよりますが保険適応も認められています。
脳梗塞の後遺症に関しても同様に脳の神経細胞を再生させ、言葉を話せるようになったり麻痺が軽くなる可能性があります。

間葉系幹細胞の分離の仕方

間葉系幹細胞は脂肪、歯髄、骨髄、臍帯から採取できることがわかっています。この選択肢の中ですと脂肪が一番採りやすいのは想像がつくと思います。脂肪は皮膚のすぐ下にあり、おなか、太ももなどいろいろなところからたくさん採れます。採取した脂肪を細胞培養施設に送り、そこで脂肪から幹細胞を分離して5~6週間かけて何億個にも増やし、それをまたクリニックに送ってもらい、患者さんに点滴、もしくは顔、関節などに局所注射します。点滴は約1時間で終了します。

間葉系幹細胞治療 身近なクリニックでの取り入れ

このように間葉系幹細胞治療は歴史があり、大きな病院でなくてもクリニックレベルでも日帰りで治療ができ安全性も高いことから、この治療は顔やからだの若返りの再生医療に使われることが多くなっています。点滴をすると顔のはり・つやが改善、毛髪が増える、よく眠れるようになる、体力がアップする、認知能力がアップするなど顔やからだ全体の若返りが起こる方が多いです。もしも糖尿病、肝臓の病気などを持っていたらそれも改善することが見込まれます。そんな魔法のような点滴ですが効果には個人差があり、100%の効果があるとは保証ができません。また1回の点滴で約300万円と高額な費用がかかってしまうのがデメリットです。

エクソソームの役割と効果

幹細胞点滴は気になっているけれど、どうしても値段が・・と躊躇されている患者様も多くいらっしゃいます。そのような方にはエクソソーム点滴がおすすめです。先ほど幹細胞の働きにおいてエクソソームも大事であることを説明しましたが、このエクソソームやその他の成長因子を点滴することでも老化したり傷ついてしまった細胞を修復することができます。幹細胞点滴ほどの万能さはありませんが、少しでもアンチエイジングしたい、今ある不調を改善させたいとご希望の方はまずはエクソソーム点滴から行うのも良い選択だと思います。ただ根本的に若返りを目指すのであれば脂肪由来幹細胞点滴をおすすめします。

顔の再生医療 線維芽細胞治療

からだの再生医療があれば顔の再生医療もあります。からだにおいては脂肪に含まれる幹細胞を利用していましたが顔においては皮膚に含まれる「線維芽細胞」を移植するのが一般的です。線維芽細胞は主に皮膚の真皮に含まれる細胞で、皮膚のはり・つやを維持する皮膚の三大成分の「コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸」を作り出すとても大事な細胞です。線維芽細胞は幹細胞ではありません。線維芽細胞は線維芽細胞にしか分化しません。耳の後ろから米粒くらいの皮膚をとり、それを細胞培養施設に送り、皮膚から線維芽細胞を分離し、線維芽細胞を5~6週間かけて1億個くらいに増やします。それをまたクリニックに送ってもらい、約2時間かけて4000~5000個を顔にこまかく注入していきます。そして2週間後に再度4000~5000個注入し、計1億個の細胞移植が終わりです。移植された線維芽細胞はヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンを作り出します。そして徐々に肌にハリが出てきます。また線維芽細胞自体が別の線維芽細胞に分化し、それがまた新しく分化し続けます。
効果は3か月後くらいから徐々にわかり、半年後には10歳若返った自分に会うことができると言われています。

まとめ

今回は再生医療のことをお話ししました。幹細胞点滴も線維芽細胞移植も老化が進むにつれて日々足りなくなってしまっている細胞を根本から補い、新しい細胞が顔やからだを再生していく根本的な医療です。
保険診療で治療を続けてもなかなか症状の改善がないと悩んでいる方や美容医療でレーザー・ヒアルロン酸注入など色々と試したが、思うような効果が出なかったと悩んでいる方は多いと思います。そんな方は一度、根本的な治療となる再生医療やエクソソーム点滴も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

 

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